小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について

相続財産には相続税が課せられます。

しかし,不動産を所有している場合,不動産の価値自体は高い傾向にありますが,現金が手許にあるとは限りません。

そのような場合にまで,画一的に相続税を課していれば,今まで住んでいたところを,相続を契機に追い出されかねません。

そのような,事態をできる限り防ぐため,租税特別措置法は,小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例を設けています。

いわゆる,小規模宅地の特例は,一定の要件を満たせば,評価額が5割から8割減額されることになります。

 

例えば,被相続人の相続財産が1億円の土地のみで,相続人が妻と子供一人だった場合,(ここでは,配偶者の税額軽減の特例は無視します)

小規模宅地の特例がなければ,

基礎控除 3000万円+600万円×2=4200万円

1億円-4200万円=5800万円が課税される相続財産額となり,

妻・子供の法定相続分は,それぞれ2900万円ですから

2900万円×15%(相続税率)-50万円(控除額)=385万円がそれぞれの相続税となります。

相続財産に現預金がなく,妻・子どもにも財産がなければ,妻・子どもはこの土地を売るなどして現金を作らなければならなくなります。

 

他方,小規模宅地の特例の適用により,評価額が8割減額されれば,土地は2000万円と評価され,4200万円の基礎控除額よりも少額なため,相続税は0円となります。

妻・子どもは,この土地を追い出されることなく,住み続けることが可能となるのです。

 

小規模宅地の特例を利用するには,条件がありますので専門家にご相談ください。

また,生前であれば,小規模宅地の特例の適用を見据えて積極的に行動することもできる可能性があります。

 

相続税に関する税理士法人心のサイトはこちら

限定承認と税金

名古屋の弁護士の内堀です。

今回は,限定承認について,税金との関係で記事を書きたいと思います。

 

 

民法第922条

「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。」

 

限定承認とは,簡単にいえば,相続人が被相続人の積極財産の範囲内で,被相続人の消極財産の責任を負うという制度です。

被相続人の積極財産が借金等の消極財産を差し引いてもまだ残っているのであればそれを相続し,借金のほうが多ければ帳消しにされるという一見便利な制度です。

しかし,実際には,あまり利用されることはありません。

その理由として,相続人全員の同意が必要だとか,相続財産目録を作成し限定承認申立書を家庭裁判所に提出しなければならないとか,手続きが煩雑であることがよくあげられます。

さらに,税金との関係でも大きなデメリットを負います。

それは,みなし譲渡所得税がかかるということです。

 

所得税法59条1項

次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす

 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

 

この条文から,限定承認をすると,被相続人の全ての財産を時価で売却したのと同じ額の贈与があったものとして,譲渡所得税が発生します。

譲渡所得があったものとして税金が発生するわけですから,3000万円+法定相続人×600万円の基礎控除等も適用されません。税率も相続税と譲渡所得税では異なります。

このため,財産がマイナスになる場合は税金が増えることにさほどの意味はないのですが,財産がプラスであったとき税金分目減りしてしまう危険性があるのです。

相続税の基礎控除額について

(遺産に係る基礎控除)

相続税法第15条  相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。

 

相続の際に相続税がどのくらい発生するのか,相続するすべての人に発生するものなのか不安を抱えている人もいらっしゃると思います。

しかし,相続税は必ず発生するわけではありません。

相続税法は,相続財産が一定金額を超えなければ相続税が発生しない仕組みをとっています。

相続税法15条は3000万円+600万円×法定相続人数の金額を基礎控除額と定めており,それ以下の相続財産であれば,相続税は発生しません。

 

現在,相続税を払わなければならないケースは1割弱程度と言われています。

また,土地・建物を相続する場合は,相続税の軽減措置があります。

これから,少しずつその説明もしていこうと考えています。

 

 

 

従業員に対する無利息貸付と課税関係

会社が従業員に対する無利息貸付した場合,従業員に課税はされるのでしょうか。

 

現在の法令では,原則として,1.8%の利率と貸し付けている利率との差額が、給与として課税されることになります。

通常,無利息で金銭を貸してくれる人はおらず,従業員が無利息で金銭を借りられたのは,会社と従業員という特別な関係があるからです。そのため,本来払うべき利息は,会社から従業員に与えられた利益であり,給与とみなそうというのがその趣旨なのでしょう。

もっとも,例外的に,①災害病気で従業員に多額の生活資金が必要となったとき,②会社が銀行等から借り入れた際の金利と同じ場合,③1.8%の利率と貸し付けている利率との差額分の利息の金額が1年間で5000円以下となる場合には,課税の対象となりません。

①従業員が無利息でお金を借りる合理的な理由がある場合,②会社が従業員に特別な利益を与えたとはいえない場合,③1.8%の利息と従業員が払っている利息の差額が小さい場合(例えば,100万円の貸付の場合,100万円の1.8%は1万8千円です。1万8千円から5千円を引いた,1万3千円以上の利息を取っていれば,課税の対象とはなりません)には,従業員に利息分の課税がなされないということです。

 

このように,何らかの利益を得た場合だけでなく,何らかの対価を払わずに済んだことについても課税関係が生じうることに気をつけましょう。

なお,現在は基準となる利率が1.8%ですが,貸付の時期によって基準となる利率が異なってきます。

 

税理士法人心のサイトはこちら

借り上げ社宅と税金

借り上げ社宅について

会社が,従業員に対して,福利厚生の一環として,住居について何らかの補助をする場合,大きく分けて住宅手当を出す場合と社宅として借り上げ割安もしくは無料で住まわせる場合があります。

税制上,住宅手当,つまり従業員が受け取る給与の一部とみなされ,課税対象となります。

他方,借り上げ社宅を,従業員に無償で貸与する場合,全てが課税対象になるわけではありません。

 

従業員に無償で借り上げ社宅を貸与する場合

(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%+12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))+ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

=賃料相当額となり,この賃料相当額が給与として課税対象になります。

原則として,「賃料相当額-徴収額」 が課税対象となります

ただし,従業員から徴収する家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、会社が受け取る家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。

 

賃料相当額を計算するためには,固定資産税の課税標準額を知る必要がありますが,証明書等を始めて見る方にとっては,どの数字がどのように使われるのか,わかりにくい場合もあります。

そのような場合は,一度,専門家に相談されることをお勧めします。