最近、ある名古屋の会社の社長から会社をやめようと思う、その際の税金関係についていろいろ教えてほしいと相談を受けました。
財産が大きく動く際には常に、税金の問題がついてまわります。
会社をやめる際には、退職金の問題、また、会社をやめるといっても株式を持っている場合にどうやめるのかという問題、様々な問題が出てきて、選択を一つ誤るだけで税金が大きく変わります。
また、会社の話であるのに、法人税はもちろん、所得税の話も出てきますし、消費税の話も絡んできますし、社長個人にお金が入ってくると今度は、その財産をどう残していくかということで、贈与税や相続税の問題が出ていきます。
まず、質問を受けたのは、会社をやめるものの、会社所有のマンションがあり、今後はそこに住みたいので、マンションを会社から個人に移す必要がありその際の税金の注意点でした。
マンションの所有権を会社から個人に移す場合には、個人で買い取る、退職金としてもらうという方法が考えられます。
ちなみに、その社長は個人としては預金をあまり持っていなかったので、マンションを買い取る場合には、退職金を受け取り、そのお金で買い取ることを検討していました。
ここで消費税の問題が出てきます。
ただ、もちろん、役員退職金を現金で給付する場合は、当然消費税は関係ありません。
しかし、その現金で受けとった退職金でマンションを買い取れば売買、又は受け取るべき退職金の代わりにマンションを渡すということであれば代物弁済となっています。
なお、消費税の対象となるのは①国内取引であること、②事業者が事業として行うものであること、③対価を得て行うものであること(寄付金、補助金等は課税対象となりません。)④資産の譲渡・貸付、役務の提供であること、の要件を満たした取引です。
売買や代物弁済の場合は、会社(会社として行う行為はすべて事業となります。)は、対価を得て、マンション(資産))の譲渡を行ったことになり、マンションのうち建物部分が課税売上となり、消費税を計算して、決算期に消費税を納付する必要があります。
他方、退職金そのものとして、マンションの現物給付を受ける場合には、対価を得て行われる資産の譲渡には当たらないと考えられ、消費税の課税対象となりません。
そのため、会社はマンションの建物部分に対する消費税を納める必要はありません。
ただ、マンションを社長が受け取るという結果は変わらないのに大きく税金関係がかわるというのは不思議です。また、税務署に何か言われたときに説明をすればいいというお話ではありません。
しっかりと、マンションを社長が受け取るということについて法律的な意味合いを意識しつつ書類を作成して、しかるべき手続きを取る必要があります。
具体的には、①株主総会において、役員退職の決議を行い、マンションを現物で給付する旨の決議が行われたことについて、議事録を作成します。
さらに、②法務局における不動産の所有権移転登記にあたり、原因を退職慰労金の給付、とします。
そうすれば、消費税の問題を避けることができます。
特に何も考えずに、例えば、税金関係のことをあまり知らない司法書士に登記だけ頼むと、マンションを取得するという結果は同じであろうということで、登記原因を代物弁済とされてしまうことがありません。
その際には、法務局にしっかり、マンションの移転の理由が代物弁済であると記載され。税務署も必ず登記を確認するので、あとから、そんなつもりはなかった(退職金の現物給付としてマンションの所有権を移した)といっても認められる可能性は低いです。
今後は、団塊の世代の年齢層からすると役員の退職に伴う退職金の支給が増えてくることが予想されます。
役員退職金は大きな金額になることが多く、それに見合うマンションの価値も高くなりがちで、少し税金の処理を間違うだけで大きく払うべき税金が変わってきます。
ご心配な方は税理士に相談することをおすすめします。