独占禁止法違反と私法上の効力

弁護士の内堀です。

ここ最近,名古屋がさらに冷え込んできています。

 

さて,今回は,ある法律行為が独占禁止法に違反した場合,私法上の効力が無効となってしまうのか,という話をしたいと思います。

この問題について,独占禁止法その他法律に明文の規定はありませんので,解釈が必要となってきます。

 

最高裁は,いわゆる両建預金が独占禁止法19条に違反するという事例(岐阜商工信用組合事件,最判昭和52年6月20日)の判決の中で,

独禁法一九条に違反した契約の私法上の効力については、その契約が公序良俗に反するとされるような場合は格別として、上告人のいうように同条が強行法規であるからとの理由で直ちに無効であると解すべきではない。けだし、独禁法は、公正かつ自由な競争経済秩序を維持していくことによって一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の民主的で健全な発達を促進することを目的とするものであり、同法二〇条は、専門的機関である公正取引委員会をして、取引行為につき同法一九条違反の事実の有無及びその違法性の程度を判定し、その違法状態の具体的かつ妥当な収拾、排除を図るに適した内容の勧告、差止命令を出すなど弾力的な措置をとらしめることによって、同法の目的を達成することを予定しているのであるから、同法条の趣旨に鑑みると、同法一九条に違反する不公正な取引方法による行為の私法上の効力についてこれを直ちに無効とすることは同法の目的に合致するとはいい難いからである。」と判示しています。

この判例からすると,最高裁は,独占禁止法違反行為について,絶対的に無効と考えているわけではなさそうです。

また,東京高判平成9年7月31日の花王化粧品販売事件においては,「独禁法に違反する私法上の行為の効力は,強行法規違反の故に直ちに無効になるとはいえないが,違反行為の目的,その態様,違法性の強弱,その明確性の程度に照らし,当該行為を有効として独禁法の規定する措置に委ねたのでは,その目的が十分に達せられない場合には,公序良俗に違反するものとして民法90条により無効となるものと解される」として,独禁法違反が私法上も無効となる場合の規範を判示しています。

また,上記の判例・裁判例は,法律行為そのものが独禁法違反となるか争われていますが,法律行為の前提となる行為が独禁法違反となる場合,法律行為の私法上の効力にどのような影響を及ぼすのかという問題もあります。