葬式費用と債務控除

名古屋の税理士兼弁護士の内堀です。

 

今回は,債務控除のうち,一番金額が大きくなることが多い葬式費用について,説明していきます。

 

まず,相続税申告の際には,相続人の財産をすべて確認・評価し,プラスの財産からマイナスの財産を引いて,相続税の課税対象となる被相続人の財産の額を算出します。

プラスの財産から葬儀費用といったマイナスの財産を差し引くことを債務控除といいます。

 

なお,葬儀費用は,被相続人の死後に発生する債務なので,被相続人のマイナスの財産には当たらないようにも思えます。

しかし,人が亡くなれば,葬式は当然に行われるものであり,被相続人の財産から負担されるべきものであるという考え方から債務控除が認められています。

 

次に,債務控除が認められている葬儀費用の範囲が重要となります。

葬儀費用の範囲が間違っていれば,本来債務控除できるはずの額を少なく申告し,納付する必要のない相続税を納付してしまうということにもなりかねません。

逆に,本来債務控除できないものを債務控除して申告すれば,税務署が税務調査を行い,足りない相続税を納付するように指摘を受け,さらにペナルティを受ける可能性もあります。

 

葬式といっても,宗教の違いや地域の違いにより,その様式は様々ですし,葬儀費用の範囲を法律で厳格に定めることは難しいことから,何が債務控除できる葬式費用か国税庁が一定のルールを定めています。

そのルールによれば,葬式費用となるは,①葬式の際に,火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(簡単に言えば葬儀会社に通常支払う費用です。),②葬儀会社への支払い以外で通常,葬式(お通夜含む)の際にかかる費用(飲食の費用,心付け等),③葬式の際にお寺に支払う読経料等のお布施,④死体の捜索,死体や遺骨の運搬にかかった費用,といったものが挙げられます。

他方,葬式費用とならないのは,①香典返しの費用,②墓石や墓地の購入費用,墓地借地料,③初七日,法事に関する費用,といったものが挙げられます。

葬儀会社に支払う費用で,初七日の費用が区別されている場合(内訳明細等で確認します。)は,初七日の費用を差し引いた上で,債務控除することになるといったことも必要なので,債務控除できるかどうかご心配であれば専門家にご相談されることをお勧めします。