相続税と上場株式の評価(特に,課税時期が土日祝日のとき)について

名古屋の税理士兼弁護士の内堀です。

最近名古屋も肌寒くなる日が増えてきました。みなさま,風邪をひかないようにお気をつけください。

 

さて,本日は,相続の際,上場株式をどのように評価するのかを説明したいと思います。

国税庁によると

財産評価基本通達169

上場株式の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。

(1) (2)に該当しない上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所(国内の2以上の金融商品取引所に上場されている株式については、納税義務者が選択した金融商品取引所とする。(2)において同じ。)の公表する課税時期の最終価格によって評価する。ただし、その最終価格が課税時期の属する月以前3か月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額(以下「最終価格の月平均額」という。)のうち最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額によって評価する

(2) 負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得した上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によって評価する。

 

とあります。

簡単にいえば,課税時期(相続開始日)の最終価格,相続開始日の属する月の1か月前の最終価格の月平均額,2か月前の最終価格の月平均額,3か月前の最終価格の月平均額の中で最も低い金額で評価できるということです。

 

なお,課税時期(相続開始日)の最終価格ですが,課税時期が休日で株式市場が開いておらず,株価が存在しない場合はどうするのでしょうか。

 

財産評価基本通達171

169≪上場株式の評価≫の定めにより上場株式の価額を評価する場合において、課税時期に最終価格がないものについては、前項の定めの適用があるものを除き、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に掲げる最終価格をもって課税時期の最終価格とする。

(1)

(2)又は(3)に掲げる場合以外の場合 課税時期の前日以前の最終価格又は翌日以後の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格(その最終価格が2ある場合には、その平均額)

 

との定めがあります。

 

例えば,相続開始日が土曜日であるなら,金曜日の終値が課税時期の最終価格となります。

このこと知らず,相続開始日が土曜日であるにもかかわらず,相続開始日以後のいちばん近い日(月曜日)の株価を最終価格とする方もいますので,注意が必要です。

民法改正と遺留分について

名古屋では,台風が過ぎ去ったものの,夏の様な気候が戻ってきています。

弁護士の内堀です。

 

今回は,民法改正の一部について書いてみたいと思います。

 以前,不動産と遺留分について,記事を書きました。

その時は,

「相続財産が不動産しかない場合,遺留分権利者は原則として,不動産の持分について移転登記を請求することしかできないのですが,受遺者が,金銭で賠償したいと反論した場合にのみ,遺留分を現金でもらうことができます。」と書きました。

 

このような現行法では,遺留分減殺請求権が行使されることで,遺贈の目的物の土地や非上場株式が共有状態になり,権利関係が複雑になってしまっていました。

 また,遺留分権利者には,現物を取得するか,金銭を取得するかの選択肢が与えられていない点も問題視されていました。

 

このような状況のもと,民法の改正がされ,以下のような条文が創設されました。

改正民法第1046条1項

 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

 

この条文により,改正民法施行後は

遺留分権利者は,遺留分侵害額に相当する金銭の支払いのみを請求することにできるようになりました。

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葬式費用と債務控除

名古屋の税理士兼弁護士の内堀です。

 

今回は,債務控除のうち,一番金額が大きくなることが多い葬式費用について,説明していきます。

 

まず,相続税申告の際には,相続人の財産をすべて確認・評価し,プラスの財産からマイナスの財産を引いて,相続税の課税対象となる被相続人の財産の額を算出します。

プラスの財産から葬儀費用といったマイナスの財産を差し引くことを債務控除といいます。

 

なお,葬儀費用は,被相続人の死後に発生する債務なので,被相続人のマイナスの財産には当たらないようにも思えます。

しかし,人が亡くなれば,葬式は当然に行われるものであり,被相続人の財産から負担されるべきものであるという考え方から債務控除が認められています。

 

次に,債務控除が認められている葬儀費用の範囲が重要となります。

葬儀費用の範囲が間違っていれば,本来債務控除できるはずの額を少なく申告し,納付する必要のない相続税を納付してしまうということにもなりかねません。

逆に,本来債務控除できないものを債務控除して申告すれば,税務署が税務調査を行い,足りない相続税を納付するように指摘を受け,さらにペナルティを受ける可能性もあります。

 

葬式といっても,宗教の違いや地域の違いにより,その様式は様々ですし,葬儀費用の範囲を法律で厳格に定めることは難しいことから,何が債務控除できる葬式費用か国税庁が一定のルールを定めています。

そのルールによれば,葬式費用となるは,①葬式の際に,火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(簡単に言えば葬儀会社に通常支払う費用です。),②葬儀会社への支払い以外で通常,葬式(お通夜含む)の際にかかる費用(飲食の費用,心付け等),③葬式の際にお寺に支払う読経料等のお布施,④死体の捜索,死体や遺骨の運搬にかかった費用,といったものが挙げられます。

他方,葬式費用とならないのは,①香典返しの費用,②墓石や墓地の購入費用,墓地借地料,③初七日,法事に関する費用,といったものが挙げられます。

葬儀会社に支払う費用で,初七日の費用が区別されている場合(内訳明細等で確認します。)は,初七日の費用を差し引いた上で,債務控除することになるといったことも必要なので,債務控除できるかどうかご心配であれば専門家にご相談されることをお勧めします。

相続税の納付の注意点

名古屋の弁護士・税理士の内堀です。

 

今回は,相続税の納付の際の注意点について,説明したいと思います。

 

相続税の申告と納付は,相続を知った日の翌日から10か月内に,被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に対しておこなう必要があります。

例えば,名古屋市中区が最後の住所地であれば,名古屋中税務署に申告と納付をする必要があります。

 

相続税の納付方法として,分割や物納を原則として認められていません。現金一括払いが基本です。

預貯金が多ければそれでも問題ないのですが,ほとんどが不動産であったり,相続財産の分け方でもめていて,10か月以内に遺産分割協議がまとまらなかったりすると大変です。

特に,未分割で申告する場合は,相続税をおさえる各種特例の適用を受けられないため,予想よりも多くの相続税を納める必要が出てくることもあります。

なお,未分割申告の場合,分割されたあとに,申告をし直すことによって,払いすぎた相続税が戻ってくることもありますので,忘れずに申告をしましょう。

 

そのような原則があるものの,現金で相続税を納付することが困難であるという事情があれば,一定の条件のもと延納制度を利用することができます。

延納も困難な場合には,一定の条件のもと物納制度を利用することができます。

 

相続税の納付についてお困りの方は一度,専門家にご相談されることをおすすめします。

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公正証書遺言の保管期間

弁護士の内堀です。

本日は,公正証書遺言の保管期間についてお話したいと思います。

普通方式の遺言には,自筆証書遺言,秘密証書遺言,公正証書遺言の3種類があります。

このうち,自筆証書遺言,秘密証書遺言は,基本的に,遺言者本人が保存するものなので,保管期間を気にする必要がありません。紛失の恐れはありますが・・・

他方,公正証書遺言は,遺言の原本を公証役場が保存します。

公証役場はどの程度の期間,この原本を保存するのでしょうか。

 

公正証書遺言の原本保管期間は,原則二十年であると,公証人法規則に規定されています。

公証人法施行規則27条1項

公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したときは、この限りでない。

一 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第三号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 二十年

 

そうすると,60歳の時に公正証書遺言を作成したが80歳を越えて存命の場合,60歳の時に作成した公正証書遺言が破棄されてしまい,新しく公正証書遺言を作り直さなければならないのでしょうか?

 

その必要はありません。なぜなら,公証人法規則には,さらに,保存期間が満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは,その事由のある間保存しなければならないと,規定しているからです。

 

公証人法施行規則27条3項

第一項の書類は、保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない。

 

公正証書遺言の場合,「保存の必要があるとき」とは,遺言者が生きていることを意味します。

ですので,安心して,公正証書遺言を作成していだければと思います。

なお,厳密にいえば,どの程度の期間が過ぎれば,保存の必要がなくなるとするのかは,公証役場ごとに取扱いがことなります。

遺言者が120歳程度の年齢に達する期間が経過するまで破棄しないという公証役場もあれば,破棄は一切しないという公証役場もあるようです。

名古屋駅前公証役場の場合は,120歳までは確実に保管しているとお聞きしたことがあります。

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固定資産税と準確定申告

名古屋の弁護士の内堀です。

 

前回は,固定資産税の納税通知書が来ていなくとも(納期の開始が未到来)債務控除できるかということをお話しました。

 

今回は,準確定申告の際に,納期の期限が未到来の固定資産税を経費とできるかをお話したいと思います。

 

被相続人が亡くなった日及び相続人がそのことを知った日が平成30年3月1日。平成30年1月1日時点において,名古屋中村区の不動産を所有し,その不動産を貸して賃料収入を得ている場合を例に考えてみます。

この場合,固定資産税等の納税通知書はささしま市税事務所から4月中に,被相続人の住所地又は手続きが済んでいれば相続人の住所地に送付されます。

そもそも,準確定申告とは,相続人が,被相続人の平成30年1月1日から死亡した日までの所得について,相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内におこなう必要のある申告です。

平成30年3月1日に相続の開始を知っていたならば,平成30年7月1日が申告期限となっています。

例年通り,平成31年3月15日までに申告すればいいというわけではないことに注意が必要です。

 

 

そして,所得税法等は,経費とできる範囲について

 

所得税法第37条(必要経費) 

 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

 

所得税法基本通達37-6(その年分の必要経費に算入する租税)

法第37条第1項の規定によりその年分の各種所得の金額の計算上必要経費に算入する国税及び地方税は、その年12月31日(年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時。以下この項において同じ。)までに申告等により納付すべきことが具体的に確定したものとする。ただし、次に掲げる税額については、それぞれ次による。

(3) 賦課税方式による租税のうち納期が分割して定められている税額 各納期の税額をそれぞれ納期の開始の日又は実際に納付した日の属する年分の必要経費に算入することができる。

とありますので,被相続人が亡くなったのが3月であれば,平成30年分の固定資産税等は,納期の開始日が到来しておらず,実際に納付することもできないので,経費とはならいないことになります。

固定資産税と債務控除

弁護士の内堀です。

 

今回は,相続税の計算の際に,まだ払っていない固定資産税を債務控除できるか,ということについて書いてみたいと思います。

例えば,平成30年1月1日時点において,名古屋市中村区の不動産を所有していれば,ささしま市税事務所から固定資産税等の納税通知書が,4月中に送付されます。

そして,被相続人が亡くなった日が平成30年1月2日であった場合,まだ納税通知書すら来ていない固定資産税を債務控除できるのでしょうか。

4月に納税通知書が来ることが確実ですが,相続開始日には,納税通知書が来ておらず,その額もわからない。債務控除できるか迷ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

 

前提として,固定資産税はその年の1月1日に当該不動産を所有している方に,賦課されます。

地方税法

(固定資産税の納税義務者等)

第三百四十三条 固定資産税は、固定資産の所有者・・・に課する

(固定資産税の賦課期日)

第三百五十九条 固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。

 

また,相続法では,

(債務控除)

第十三条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)

第十四条 前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る

2 前条の規定によりその金額を控除すべき公租公課の金額は、被相続人の死亡の際債務の確定しているものの金額のほか、被相続人に係る所得税、相続税、贈与税、地価税、再評価税、登録免許税、自動車重量税、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、航空機燃料税、石油石炭税及び印紙税その他の公租公課の額で政令で定めるものを含むものとする。

 

と規定されています。

これらの規定から,相続開始日が平成30年1月2日である場合,平成30年1月1日に不動産を所有していた被相続人に固定資産税という公租公課が賦課されることは確実なので,固定資産税の額をを債務控除することができそうです。

相続開始日に,納税通知書が来ているか否か,すでに固定資産税を支払っているか否か,は関係ありません。

遺留分と不動産

名古屋も少しずつ暖かくなり,桜のきれいな季節となってきました。

弁護士の内堀です。

 

今回は,不動産と遺留分について,書いてみたいと思います。

 

相続財産が不動産しか無い時,絶対に不動産自体をもらいたいと主張する遺留分権利者もいますし,絶対に金銭をもらいたいと主張する遺留分権利者もいます。

 

法律上はどうなっているのでしょうか。

 

一般論として,日本の民法では,物の遺留分は,原則として,金銭ではなく,共有持分をもって清算されることになっています。

そのため,相続財産について,不動産しかない場合は,共有持分につき,不動産の移転登記請求権を請求できるにとどまり,遺留分権利者が,不動産の共有持分に相当する金銭を請求することはできません。

 

他方,遺留分を請求されている側(以後,受遺者といいます。)は,遺留分権利者と当該不動産を共有したくないと考えれば,遺留分権利者に対し,金銭で遺留分を支払う旨意思を表明し,遺留分に応じた金銭を支払うことで,移転登記請求を免れることができます。

 

以上をまとめると,相続財産が不動産しかない場合,遺留分権利者は原則として,不動産の持分について移転登記を請求することしかができないのですが,受遺者が,金銭で賠償したいと反論した場合にのみ,遺留分を現金でもらうことができます。

配偶者の税額軽減の注意点

前回の記事では,配偶者の税額軽減について,概要を説明しました。

今回は,配偶者の税額軽減の注意点に関する記事です。

 

まず,気をつけなければならないのは,配偶者の軽減は,配偶者が実際に受け取った相続財産を基礎に計算されるため,相続税の申告期限までに分割されていない財産は,原則として,税額軽減の対象にならないということです。

相続税の申告期限とは,被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。

 

ただし,相続税の申告の際に添付書類として,「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出して,3年以内に相続財産を分割すれば税額軽減を受けることができます。

3年以内に分割できなくとも,申告期限後3年経過した日の翌日から2か月以内に,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認請求書」を税務署に提出し,税務署長の承認を受けていれば,分割できない事情がなくなった後4か月以内に,更正の請求手続をすることで,税額軽減の対象となります。

以前の記事にも書きましたが,相続でもめると3年ぐらいはあっという間に経過してしまいます。

いつまでに,何を何処に提出しなければならないのかは,しっかりと記録し,忘れないようにしましょう。

配偶者の取得した税額の基礎となる財産が1億6000万円(基礎控除等の計算後の配偶者の取得額)で,配偶者の税額軽減を受けられる額も1億6000万円であったのに,これらの手続を忘れた場合,他の特例などを考慮せず単純に相続税を計算すると,

(1億6000万円-1700万円)×40%=5720万円

このように,5720万円の相続税がかかってきます。

絶対に忘れないようにしましょう。

 

他にも,配偶者の税額軽減を受けられなくなる場合や,配偶者に法定相続分以上に1億6000万円ギリギリまで財産を集中させることでかえって税金面で,後々損をすることもありますので,ご心配な方は,弁護士等の専門家にご相談ください。

配偶者の税額の軽減

相続税減額の特例について,よく使われるものに配偶者の税額の軽減が上げられます。

配偶者の税額の軽減は,被相続人の配偶者が取得する相続財産について一定の範囲で相続税がかからない制度です。

一般的に,配偶者の財産により生活されている方も多いですので,遺された配偶者のその後の生活に配慮して,特に大きな税額の軽減が認められています。

配偶者の税額軽減により,1億6000万円か法定相続分のどちらか多い金額までは相続税はかかりません。(相続税法19条の2第1項)

 

ちなみに,法定相続分とは,民法上認められた相続人の相続割合のことをいいます。 例えば,①配偶者と子供が相続人である場合,配偶者の法定相続分は2分の1となります(民法900条1号)。

②配偶者と直系尊属が相続人である場合は, 配偶者の法定相続分は3分の2となります(民法900条2号)。

③配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合は, 配偶者の法定相続分は4分の3となります(民法900条3号)。

 

 

 

参照条文 抜粋

(配偶者に対する相続税額の軽減)

第一九条の二 被相続人の配偶者が当該被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、当該配偶者については、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した残額があるときは、当該残額をもつてその納付すべき相続税額とし、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額以下であるときは、その納付すべき相続税額は、ないものとする。

一 当該配偶者につき第十五条から第十七条まで及び前条の規定により算出した金額

二 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の総額に、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額が当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額

イ 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額に民法第九百条(法定相続分)の規定による当該配偶者の相続分(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続分)を乗じて算出した金額(当該被相続人の相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)が当該配偶者のみである場合には、当該合計額)に相当する金額(当該金額が一億六千万円に満たない場合には、一億六千万円)

生命保険金と相続税

名古屋の弁護士の内堀です。

前回の記事でも述べたように,生命保険金は相続財産ではありません。

ならば,相続税がかからないのではないか,相続財産を被相続人が亡くなる前に保険料としておけば生命保険金全額に相続税はかからず節税になるのではないかと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが,それは違います。

 

相続税法3条1項1号抜粋

第三条  次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。

一  被相続人の死亡により相続人その他の者が生命保険契約を取得した場合においては、当該保険金受取人について、当該保険金の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分

 

簡単にまとめると,被相続人が保険料を払い,相続人が受取人となった場合,税務上は,保険金は相続により取得したものとみなし,課税の対象となるということです。

いわゆる,「みなし相続財産」といわれています。

 

ただし,生命保険金全額が相続税の対象となるのではなく,一定金額は非課税となることが認められています。

 

第十二条  次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。

五  相続人の取得した第三条第一項第一号に掲げる保険金については、イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、イ又はロに定める金額に相当する部分

イ 第三条第一項第一号の被相続人のすべての相続人が取得した同号に掲げる保険金の合計額が五百万円に当該被相続人の第十五条第二項に規定する相続人の数を乗じて算出した金額(ロにおいて「保険金の非課税限度額」という。)以下である場合 当該相続人の取得した保険金の金額

ロ イに規定する合計額が当該保険金の非課税限度額を超える場合 当該保険金の非課税限度額に当該合計額のうちに当該相続人の取得した保険金の合計額の占める割合を乗じて算出した金額

 

簡単にまとめると,「法定相続人の人数×500万円」については,非課税となります。

この限度額の範囲において,相続税の節税が可能です。

 

このように,民法上の相続と税務上の相続は,その仕組みがまったく同じというわけではありませんので注意が必要です。

生命保険金は相続財産となるのか

基本的なことから説明していきます。

そもそも,「相続」とは,被相続人の死亡によって開始します(民法882条)

そして,相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。ただし,被相続人の一身に専属したものは,この限りではありません(民法896条)

この相続によって,承継される「被相続人の財産に属した一切の権利義務」が相続財産,一般的には遺産と呼ばれるものです。

この相続財産の中には,プラスの財産(現金,預金,不動産等)だけでなく,マイナスの財産(借金等)も含まれています。

それでは,被相続人が生命保険に入っており,相続人が受取人となっていた場合,生命保険金は相続財産となるのでしょうか。

上述のように,相続財産とは,「被相続人の財産に属した一切の権利義務」です。

保険金は,保険契約に基づき受取人が受け取る受取人固有の財産ですから,相続財産には含まれません。

 

しかし,生命保険金は,特段の事情があれば,特別受益に準じて持ち戻しの対象となることもある(最高裁判決H16・10・29)ので,注意が必要です。

 

最高裁判決H16・10・29の抜粋

養老保険契約に基づき保 険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。

もっとも,上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。

上記特段の事情の有無については,保険金の額この額の遺産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである

 

さらに,「相続財産に含まれない」としても,「相続税の対象」とはなります。

相続税との関係については,次回の記事で書きたいと思います。

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例についての注意点

名古屋の弁護士の内堀です。

前回は,納める相続税が少なくなる可能性のある小規模宅地等についての相続税の課税価額の計算の特例(以下,小規模宅地の特例と省略します。)について記事を書きました。

今回は,相続税の申告時に相続財産が未分割である場合の注意点を書きたいと思います。

 

前提として,相続税の申告期限は,相続と知った時の翌日から10カ月以内です。期限後申告には,延滞税が課されます。

そして,相続税申告時に,遺産分割がされていなくとも,一旦は法定相続分に従い,相続税を納めなければなりません。

このような未分割の状態での相続税の申告の際には,小規模宅地の特例を適用することはできません。

ただし,申告期限後3年以内の分割見込書を税務署に提出すれば,3年の遺産分割時に小規模宅地の特例の適用を受けることができます。

 

この3年という期間が曲者です。

遺産分割でもめていれば,3年間程度はあっという間に過ぎます。

他方,遺産分割の紛争で頭がいっぱいの状況で,小規模宅地の特例の適用条件について記憶し続けるには,3年間は長すぎます。

そして,何もせず,3年経過したのちに遺産分割の合意をしても,小規模宅地の特例は適用されません。

前回の記事のように1億円の土地という相続財産があり,妻と子供の二人がいる場合であれば,小規模宅地の特例の適用がある場合には支払わずに済んだ相続税,合計770万円を納めなければならない事態に陥ります。

 

この3年という期間をしっかり覚えていれば,仮に未分割の状態で3年が経過しそうであっても,申告期限後3年経過時から2カ月以内に,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出,税務署の承認を受けることで,小規模宅地の特例の適用が可能となります。

この場合,判決の確定の日など遺産が分割できる状態になったときから4ヶ月以内に分割を行えば,小規模宅地の特例の適用を受けることができます。

 

相続は,あらゆることに意識を向けていなければ,大きな失敗をする可能性があります。慎重に対応することが必要です。

 

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小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について

相続財産には相続税が課せられます。

しかし,不動産を所有している場合,不動産の価値自体は高い傾向にありますが,現金が手許にあるとは限りません。

そのような場合にまで,画一的に相続税を課していれば,今まで住んでいたところを,相続を契機に追い出されかねません。

そのような,事態をできる限り防ぐため,租税特別措置法は,小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例を設けています。

いわゆる,小規模宅地の特例は,一定の要件を満たせば,評価額が5割から8割減額されることになります。

 

例えば,被相続人の相続財産が1億円の土地のみで,相続人が妻と子供一人だった場合,(ここでは,配偶者の税額軽減の特例は無視します)

小規模宅地の特例がなければ,

基礎控除 3000万円+600万円×2=4200万円

1億円-4200万円=5800万円が課税される相続財産額となり,

妻・子供の法定相続分は,それぞれ2900万円ですから

2900万円×15%(相続税率)-50万円(控除額)=385万円がそれぞれの相続税となります。

相続財産に現預金がなく,妻・子どもにも財産がなければ,妻・子どもはこの土地を売るなどして現金を作らなければならなくなります。

 

他方,小規模宅地の特例の適用により,評価額が8割減額されれば,土地は2000万円と評価され,4200万円の基礎控除額よりも少額なため,相続税は0円となります。

妻・子どもは,この土地を追い出されることなく,住み続けることが可能となるのです。

 

小規模宅地の特例を利用するには,条件がありますので専門家にご相談ください。

また,生前であれば,小規模宅地の特例の適用を見据えて積極的に行動することもできる可能性があります。

 

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限定承認と先買権

先日の記事では,限定承認の税制上のデメリットを強調しましたが,もちろんメリットもありますし,特定の場合には便利な制度でもあります。

その一つとして,先買権の行使が挙げられます。

例えば,ある程度相続人に金銭的余裕があり,被相続人たる父親の土地建物を相続放棄したくないが,父親の借金を全て負うことはできないという場合です。

通常,相続放棄や限定承認がされると,不動産は競売等により換価されることが多いです。

しかし,限定承認の手続きの場合,相続人が希望すれば,家庭裁判所に鑑定人を選任してもらい,その鑑定人が評価した額で,競売にかけられる前に優先的に相続財産の一部を買い取ることができるのです。(買い取ることは義務ではないので,鑑定額が高すぎれば,買わないという選択をすることもできます。)

このことを「先買権の行使」といいます。

このように,一般的には使いにくい制度であっても,特定の場合には非常にありがたい制度になることもありますので,相続の場合は様々な角度からの検討が必要です。

ただし,限定承認の場合,まずは,相続人全員の共有で法定相続分に従い相続登記をすることになります。

そのため,相続人が複数いる場合は,先買権の行使をした相続人に対してさらに共有持分の移転があり,別途,不動産取得税,登録免許税等の費用がかかってくるので注意が必要です。