固定資産税と相続(連帯納付義務) 後半

今回も,7月と同じく固定資産税について書いていきます

平成30年4月に名古屋の土地の所有者Aが亡くなり,相続人Bと相続人Cがいて,平成31年1月1日時点でも,相続人BC間で分割がされず共有状態であることが前提です。

 

平成31年1月1日時点での土地の所有者は,共有者であるBとCですので,BとCが納税義務者となります。Aの納税義務を承継したわけではありません。

 

地方税法第10条の2 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。

 

この規定を根拠に連帯納税義務があるとされ,自治体は,Bさん又はCさん一人に対して,固定資産税の納付を求めることができ,2分の1は別の相続人が所有しているから半分以上は固定資産税を納付しない!と拒否することはできません。

 

では,前回の記事の内容に戻りますが,

Aが亡くなった年の固定資産税,また,それ以前に未納の固定資産税があった場合にも連帯納税義務があるのでしょうか。

この点について,地方税法からすると,連帯納付義務はなく,相続人は相続分に応じた按分額の責任を負えば足りると考えます(私見)。

 

ただし,実務上,未納額等の固定資産税の通知書で,相続人ごとに按分したものは見たことがありません。

相続人の内の誰か一人に,全額分の通知書が来ることがほとんどです。

ただし,自治体のHPの記載を調べてみると,相続人には,連帯納付義務がありますという記載はあるのですが,根拠としては,地方税法第10条の2(共有者に連帯納付義務があるという規定)をあげているものがほとんどでした。

おそらく実務上,被相続人が亡くなった年の固定資産税及び未納の固定資産税について,一人の相続人が自分の相続分の割合以上の支払い,後に他の相続人と清算をすることがほとんどで,自治体に対し,自分の相続分の割合以上の支払いを拒否する人はあまりいないと思われます。

 

地方税法を熟知している人は少ないと思いますが,そういう場合は,条文を一つ一つ丁寧に調査確認する必要があります。http://www.lawyers-kokoro.com/

固定資産税と相続(連帯納付義務)前半

今日は,固定資産税の納税義務者が亡くなられた場合,固定資産税は誰が払うべきなのか,連帯納付義務があるのかについて,考えたいと思います。

ちなみに,文献や自治体のHP等を調べても,明確に記載されているものはなかったので,あくまでも私見で,今後訂正するかもしれません。

 

例えば,平成30年4月に名古屋の土地の所有者Aがなくなり,相続人Bと相続人Cがいると仮定します。なお,平成31年1月1日時点でも,相続人BC間で分割がされず共有状態であったとします。

 

まず,固定資産税とは,毎年1月1日時点の所有者に課税される税金です。

地方税法第359条 (固定資産税の賦課期日)

固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。

 

ですので,4月にAがなくなったからといって,4月までの固定資産税はA名義で納付を求められ,それ以降の固定資産税は相続人名義での納付が求められるということはありません。

あくまでも,1月1日時点で土地の所有者であったAに固定資産税が課税されます,ただし,Aがなくなった場合は,相続人に納税義務が承継されます。

 

地方税法第9条1項(相続による納税義務の承継)

相続(包括遺贈を含む。以下本章において同じ。)があつた場合には、その相続人(包括受遺者を含む。以下本章において同じ。)又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百五十一条の法人は、被相続人(包括遺贈者を含む。以下本章において同じ。)に課されるべき、又は被相続人が納付し、若しくは納入すべき地方団体の徴収金(以下本章において「被相続人の地方団体の徴収金」という。)を納付し、又は納入しなければならない。ただし、限定承認をした相続人は、相続によつて得た財産を限度とする。

 

そして,相続人が複数いる場合には,相続人が相続分により按分して納付義務を負います。

地方税法第9条2項

前項の場合において、相続人が二人以上あるときは、各相続人は、被相続人の地方団体の徴収金を民法第九百条から第九百二条までの規定によるその相続分によりあん分して計算した額を納付し、又は納入しなければならない。

 

以下,8月の記事に続く

生前贈与と相続税対策

本日は,生前贈与の注意点をいくつか書いていきます。

 

相続税は,相続開始時における相続財産を評価して,相続税評価額を確定した上で算出される税金です。

ということは,相続開始日までに事前に相続人に贈与をしておけば,相続税が少なくなります。

ただし,贈与の額によっては,贈与税が課されます。

一般的に,同じ額であれば,贈与税の税率のほうが相続税の税率よりも高いのでが必要です。

 

暦年贈与について

贈与税には,毎年(暦年)110万円の基礎控除があるので,110万円以下の贈与であれば,贈与税はかかりませんし,申告も不要です。

ただし,相続開始日から3年以内の相続人に対する贈与は,110万円の基礎控除額以内の贈与であっても相続税の計算の基礎となる財産として加算されます。

このような加算を避けるためには,法定相続人ではない方に贈与するのがおすすめです。

例えば,被相続人予定者の孫,法定相続人の配偶者に贈与するという方法も考えられます。

 

相続時精算課税について

相続時精算課税とは,一定額(2500万円)まで贈与時に贈与税がかからないかわりに,相続の時に贈与時の評価額で相続税の計算の基礎に加算するという制度です。

相続財産の先渡しというイメージで良いかと思います。

そのため,現金で贈与する場合は,同じ額が相続税の計算の基礎に加算されるので,結局,贈与しなかった場合と同じ相続税を払うことになります。

他方,値上がりが見込まれる土地や株式を2500万円分相続時精算課税を利用して贈与しておけば,相続開始時に,その土地や株式が値上がりしていたとしても,相続開始時において,相続税の計算の基礎として2500万円加算するだけですみますので,値上がり分だけ相続税を少なくすることができます。

 

その他にも国は,生前贈与を勧めており,配偶者に対する贈与,住宅資金の贈与,教育資金の贈与,結婚子育て資金の贈与の場合に,一定の要件のもと,贈与税の優遇をしています。

 

名古屋に住んでいる方はお気軽にご相談ください。

税務調査と「調査の終了の際の手続に関する同意書」

 

本日は,税務調査の手続きに関するお話をしようと思います。

 

税務調査があると,我々税理士が,税務調査の対象となっている依頼者(納税義務者)に,「調査の終了の際の手続に関する同意書」という書面に,印鑑を押していただくようお願いすることがあります。

 

なぜ,このような書類が必要になるかというと,国税通則法に以下のような定めがあるからです。

(調査の終了の際の手続)

第74条の11

1項 税務署長等は、国税に関する実地の調査を行つた結果、更正決定等(第三十六条第一項(納税の告知)に規定する納税の告知(同項第二号に係るものに限る。)を含む。以下この条において同じ。)をすべきと認められない場合には、納税義務者であつて当該調査において質問検査等の相手方となつた者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする。

2項 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。

3項 前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。

5項 実地の調査により質問検査等を行つた納税義務者について第七十四条の九第三項第二号に規定する税務代理人がある場合において、当該納税義務者の同意がある場合には、当該納税義務者への第一項から第三項までに規定する通知等に代えて当該税務代理人への通知等を行うことができる

 

長くて分かりづらいですが,簡単に言うと,税務署は,税務調査の終了の際して,原則として,調査結果を納税義務者に説明する必要があるということです。

ただし,「納税義務者の同意」があれば,税務署は,税務代理人たる税理士に説明等をすれば足ります。

逆にいうと,納税義務者の同意がなければ,税務代理人であっても,納税義務者の代わりに税務署からの説明等を受けることができないということです。

 

それくらい,税務調査の終了の際の納税義務者に対する説明について,国税通則法は重要視しているということです。

 

なお,この「同意」は,条文上,書面であることを要件としておりませんので,厳密には,口頭でも同意があれば足ります。

そのため,地域,調査官によって,書面を求められたり,そうではなかったりします。

 

税務調査でお困りの際には,税理士法人心・弁護士法人心にご相談ください。

孫養子と2割加算

名古屋の弁護士の内堀です。

 

今回は,孫養子に関係する相続税の規定の話をしようと思います。

 

相続税対策として,孫を養子にする方法が有名です。

基礎控除は,「3000万円+法定相続人の数×600万円」という計算をするので,孫を養子にすることで,600万円分の節税になります。ただし,孫養子が法定相続人となれば,当たり前ですが,孫養子にも法定相続分に応じた相続財産を取得する権利がありますし,遺言等で孫養子に一切の財産を承継させないとしていたとしても,遺留分が認められます。

そのため,孫養子の行動次第では,新たな相続紛争の種が生まれることになります。

推定相続人が全員で,孫養子について節税のメリットだけでなく,どのようなデメリットがあるのかを検討する等,孫養子という相続税対策をするには,慎重な対応が求められると思います。

 

また,孫養子の場合は,相続税に関して不利な規定が相続税法に定められています。

 

(相続税額の加算)

第18条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。

2 前項の一親等の血族には、同項の被相続人の直系卑属が当該被相続人の養子となつている場合を含まないものとする。ただし、当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつている場合は、この限りでない。

 

この規定から,孫養子は原則として,相続税が通常の場合よりも2割加算されます。

ただし,孫養子が代襲相続人としての地位も有する場合には,2割加算の対象とはなりません。

名古屋で相続税でお困りの方はこちら

相続税と上場株式の評価(特に,課税時期が土日祝日のとき)について

名古屋の税理士兼弁護士の内堀です。

最近名古屋も肌寒くなる日が増えてきました。みなさま,風邪をひかないようにお気をつけください。

 

さて,本日は,相続の際,上場株式をどのように評価するのかを説明したいと思います。

国税庁によると

財産評価基本通達169

上場株式の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。

(1) (2)に該当しない上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所(国内の2以上の金融商品取引所に上場されている株式については、納税義務者が選択した金融商品取引所とする。(2)において同じ。)の公表する課税時期の最終価格によって評価する。ただし、その最終価格が課税時期の属する月以前3か月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額(以下「最終価格の月平均額」という。)のうち最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額によって評価する

(2) 負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得した上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によって評価する。

 

とあります。

簡単にいえば,課税時期(相続開始日)の最終価格,相続開始日の属する月の1か月前の最終価格の月平均額,2か月前の最終価格の月平均額,3か月前の最終価格の月平均額の中で最も低い金額で評価できるということです。

 

なお,課税時期(相続開始日)の最終価格ですが,課税時期が休日で株式市場が開いておらず,株価が存在しない場合はどうするのでしょうか。

 

財産評価基本通達171

169≪上場株式の評価≫の定めにより上場株式の価額を評価する場合において、課税時期に最終価格がないものについては、前項の定めの適用があるものを除き、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に掲げる最終価格をもって課税時期の最終価格とする。

(1)

(2)又は(3)に掲げる場合以外の場合 課税時期の前日以前の最終価格又は翌日以後の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格(その最終価格が2ある場合には、その平均額)

 

との定めがあります。

 

例えば,相続開始日が土曜日であるなら,金曜日の終値が課税時期の最終価格となります。

このこと知らず,相続開始日が土曜日であるにもかかわらず,相続開始日以後のいちばん近い平日(月曜日)の株価を最終価格とする方もいますので,注意が必要です。

葬式費用と債務控除

名古屋の税理士兼弁護士の内堀です。

 

今回は,債務控除のうち,一番金額が大きくなることが多い葬式費用について,説明していきます。

 

まず,相続税申告の際には,相続人の財産をすべて確認・評価し,プラスの財産からマイナスの財産を引いて,相続税の課税対象となる被相続人の財産の額を算出します。

プラスの財産から葬儀費用といったマイナスの財産を差し引くことを債務控除といいます。

 

なお,葬儀費用は,被相続人の死後に発生する債務なので,被相続人のマイナスの財産には当たらないようにも思えます。

しかし,人が亡くなれば,葬式は当然に行われるものであり,被相続人の財産から負担されるべきものであるという考え方から債務控除が認められています。

 

次に,債務控除が認められている葬儀費用の範囲が重要となります。

葬儀費用の範囲が間違っていれば,本来債務控除できるはずの額を少なく申告し,納付する必要のない相続税を納付してしまうということにもなりかねません。

逆に,本来債務控除できないものを債務控除して申告すれば,税務署が税務調査を行い,足りない相続税を納付するように指摘を受け,さらにペナルティを受ける可能性もあります。

 

葬式といっても,宗教の違いや地域の違いにより,その様式は様々ですし,葬儀費用の範囲を法律で厳格に定めることは難しいことから,何が債務控除できる葬式費用か国税庁が一定のルールを定めています。

そのルールによれば,葬式費用となるは,①葬式の際に,火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(簡単に言えば葬儀会社に通常支払う費用です。),②葬儀会社への支払い以外で通常,葬式(お通夜含む)の際にかかる費用(飲食の費用,心付け等),③葬式の際にお寺に支払う読経料等のお布施,④死体の捜索,死体や遺骨の運搬にかかった費用,といったものが挙げられます。

他方,葬式費用とならないのは,①香典返しの費用,②墓石や墓地の購入費用,墓地借地料,③初七日,法事に関する費用,といったものが挙げられます。

葬儀会社に支払う費用で,初七日の費用が区別されている場合(内訳明細等で確認します。)は,初七日の費用を差し引いた上で,債務控除することになるといったことも必要なので,債務控除できるかどうかご心配であれば専門家にご相談されることをお勧めします。

相続税の納付の注意点

名古屋の弁護士・税理士の内堀です。

 

今回は,相続税の納付の際の注意点について,説明したいと思います。

 

相続税の申告と納付は,相続を知った日の翌日から10か月内に,被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に対しておこなう必要があります。

例えば,名古屋市中区が最後の住所地であれば,名古屋中税務署に申告と納付をする必要があります。

 

相続税の納付方法として,分割や物納を原則として認められていません。現金一括払いが基本です。

預貯金が多ければそれでも問題ないのですが,ほとんどが不動産であったり,相続財産の分け方でもめていて,10か月以内に遺産分割協議がまとまらなかったりすると大変です。

特に,未分割で申告する場合は,相続税をおさえる各種特例の適用を受けられないため,予想よりも多くの相続税を納める必要が出てくることもあります。

なお,未分割申告の場合,分割されたあとに,申告をし直すことによって,払いすぎた相続税が戻ってくることもありますので,忘れずに申告をしましょう。

 

そのような原則があるものの,現金で相続税を納付することが困難であるという事情があれば,一定の条件のもと延納制度を利用することができます。

延納も困難な場合には,一定の条件のもと物納制度を利用することができます。

 

相続税の納付についてお困りの方は一度,専門家にご相談されることをおすすめします。

相続税について名古屋で税理士をお探しの方はこちら

固定資産税と準確定申告

名古屋の弁護士の内堀です。

 

前回は,固定資産税の納税通知書が来ていなくとも(納期の開始が未到来)債務控除できるかということをお話しました。

 

今回は,準確定申告の際に,納期の期限が未到来の固定資産税を経費とできるかをお話したいと思います。

 

被相続人が亡くなった日及び相続人がそのことを知った日が平成30年3月1日。平成30年1月1日時点において,名古屋中村区の不動産を所有し,その不動産を貸して賃料収入を得ている場合を例に考えてみます。

この場合,固定資産税等の納税通知書はささしま市税事務所から4月中に,被相続人の住所地又は手続きが済んでいれば相続人の住所地に送付されます。

そもそも,準確定申告とは,相続人が,被相続人の平成30年1月1日から死亡した日までの所得について,相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内におこなう必要のある申告です。

平成30年3月1日に相続の開始を知っていたならば,平成30年7月1日が申告期限となっています。

例年通り,平成31年3月15日までに申告すればいいというわけではないことに注意が必要です。

 

 

そして,所得税法等は,経費とできる範囲について

 

所得税法第37条(必要経費) 

 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

 

所得税法基本通達37-6(その年分の必要経費に算入する租税)

法第37条第1項の規定によりその年分の各種所得の金額の計算上必要経費に算入する国税及び地方税は、その年12月31日(年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時。以下この項において同じ。)までに申告等により納付すべきことが具体的に確定したものとする。ただし、次に掲げる税額については、それぞれ次による。

(3) 賦課税方式による租税のうち納期が分割して定められている税額 各納期の税額をそれぞれ納期の開始の日又は実際に納付した日の属する年分の必要経費に算入することができる。

とありますので,被相続人が亡くなったのが3月であれば,平成30年分の固定資産税等は,納期の開始日が到来しておらず,実際に納付することもできないので,経費とはならいないことになります。

固定資産税と債務控除

弁護士の内堀です。

 

今回は,相続税の計算の際に,まだ払っていない固定資産税を債務控除できるか,ということについて書いてみたいと思います。

例えば,平成30年1月1日時点において,名古屋市中村区の不動産を所有していれば,ささしま市税事務所から固定資産税等の納税通知書が,4月中に送付されます。

そして,被相続人が亡くなった日が平成30年1月2日であった場合,まだ納税通知書すら来ていない固定資産税を債務控除できるのでしょうか。

4月に納税通知書が来ることが確実ですが,相続開始日には,納税通知書が来ておらず,その額もわからない。債務控除できるか迷ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

 

前提として,固定資産税はその年の1月1日に当該不動産を所有している方に,賦課されます。

地方税法

(固定資産税の納税義務者等)

第三百四十三条 固定資産税は、固定資産の所有者・・・に課する

(固定資産税の賦課期日)

第三百五十九条 固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。

 

また,相続法では,

(債務控除)

第十三条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)

第十四条 前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る

2 前条の規定によりその金額を控除すべき公租公課の金額は、被相続人の死亡の際債務の確定しているものの金額のほか、被相続人に係る所得税、相続税、贈与税、地価税、再評価税、登録免許税、自動車重量税、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、航空機燃料税、石油石炭税及び印紙税その他の公租公課の額で政令で定めるものを含むものとする。

 

と規定されています。

これらの規定から,相続開始日が平成30年1月2日である場合,平成30年1月1日に不動産を所有していた被相続人に固定資産税という公租公課が賦課されることは確実なので,固定資産税の額をを債務控除することができそうです。

相続開始日に,納税通知書が来ているか否か,すでに固定資産税を支払っているか否か,は関係ありません。

確定申告と医療費控除 2

名古屋の弁護士の内堀です。

今回は,医療費控除のお話の続きです。

 

Q 医療費の領収の原本は戻ってくるのですか。

医療費控除を受けたい場合,原則として,領収書原本を提出する必要があります。

何度も領収書を使い回すなど不正に利用されることを防ぐためです。

しかし,原本を手元においておきたいという方もいらっしゃると思います。

そんな方は,税務署の窓口で,領収書を手元においておきたい旨伝えましょう。

そうすると,税務署の職員は,領収書の内容をその場で確認したあと,確認済みの印を押して,領収書を返してくれます。

なお,内容の確認に時間がかかることもあるので注意が必要です。

また,領収書原本の提示を後日税務署から求められることもあるので,しっかりと保管しておきましょう。

また,郵送の場合は,領収書を返却希望である旨わかるようにして,返信用封筒を同封しておけば,後日領収書が返送されます。

また,電子申告システムを利用する場合は,医療費の金額,医療機関等の情報をデータとして送り,領収書原本を提出する必要が無いので,領収書を手元においておくことができます。

また,2018年からは,医療費控除の明細書を提出することで,領収書の原本を提出する必要がなくなりました。

確定申告と医療費控除 1

第1 確定申告と医療費控除

そろそろ,確定申告の時期がやってきました。名古屋市中村区に住んでいる場合は,名古屋中村税務署に申告することになります。

確定申告期間は,平成30年2月16日(金)から平成30年3月15日(木)で,平成29年1月1日から平成29年12月31日までの会計結果を税務署に報告しなければなりません。

この時期になると,確定申告に関していろいろと質問を受けることが多いのですが,その中でも医療費控除のことについて,よく聞かれます。

医療費控除について,よく聞かれる内容をいくつか説明していきたいと思います。

第2 医療費控除とは

そもそも,医療費控除とは,医療費をたくさん払った人に対して,税金を軽くする制度です。

平成30年3月15日までに申告する場合であれば,平成29年1月1日から平成29年12月31日の間に,自己又は自己と生計を同じくする配偶者その他親族のために医療費を支払った場合で,その額が一定額を越えるとき,所得控除を受けることができるのです。

医療費控除=支払った医療費合計額-保険金等の補填金額-(10万円又はその年の総所得金額が200万円未満の人は,総所得金額の5%の金額)という計算によって,医療費控除の対象となる金額が導き出されます。

保険金等の補填金額とは,高額療養費や出産育児一時金等も含まれます。

なお,保険金等の補填金額は,その保険金等に対応する支払済医療費の金額を限度として差し引きます。

例えば,ある怪我の治療のため医療費が15万円かかり保険金が20万円給付された場合,引ききれない5万円について他の怪我のために支払った医療費に補填して,医療費控除の金額を計算しないということです。

第3 よく聞かれる質問について

1 確定申告をする本人の医療費のみが医療費控除の対象ですか?

すでに,説明したとおり,生計を一にする配偶者・親族の医療費であれば対象になります。

成年した子どもであっても,親が金銭面も含めて生活の面倒を見ている場合であれば,生計を一にしているといえるでしょう。

なお,1年を通して生計を一にしている必要はなく,医療費の支出があった時点で生計を一にしていれば大丈夫です。

2 医療費控除は10万円以上の医療費を支払ってなければ,関係ありませんよね?

これもすでに説明したとおりです。

医療費控除は,その年の総所得金額等が200万円未満の人は,総所得金額等の5%の金額以上の医療費を支払っていれば,所得控除を受けることができます。

ですから,10万円以上の医療費を支払ってない場合でも,医療費控除を受けられる可能性があることに注意してください。

青色申告承認の再申請について

名古屋もだいぶ寒くなってきました。

 

今回は,青色申告の再申請についてです。

 

(青色申告の承認の取消し)

法人税法第127条 第百二十一条第一項(青色申告)の承認を受けた内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実がある場合には、納税地の所轄税務署長は、当該各号に定める事業年度まで遡つて、その承認を取り消すことができる。この場合において、その取消しがあつたときは、当該事業年度開始の日以後その内国法人が提出したその承認に係る青色申告書(納付すべき義務が同日前に成立した法人税に係るものを除く。)は、青色申告書以外の申告書とみなす。

一 その事業年度に係る帳簿書類の備付け、記録又は保存が前条第一項に規定する財務省令で定めるところに従つて行われていないこと 当該事業年度

二 その事業年度に係る帳簿書類について前条第二項の規定による税務署長の指示に従わなかつたこと 当該事業年度

三 その事業年度に係る帳簿書類に取引の全部又は一部を隠蔽し又は仮装して記載し又は記録し、その他その記載又は記録をした事項の全体についてその真実性を疑うに足りる相当の理由があること 当該事業年度

四 第七十四条第一項(確定申告)の規定による申告書をその提出期限までに提出しなかつたこと 当該申告書に係る事業年度

 

このように法人税法には,一定の理由があれば,青色申告承認を取り消す規定があります。

青色申告の承認の取消通知書が来てしまったら,二度と青色申告ができなくなるのではないかと不安に思われる方がいるかもしれません。

青色申告承認の再申請について説明していきたいと思います。

法人税法を見ると

第123条 税務署長は、前条第一項の申請書の提出があつた場合において、その申請書を提出した内国法人につき次の各号のいずれかに該当する事実があるときは、その申請を却下することができる。

と規定され,

3号に「第百二十七条第四項(青色申告の承認の取消し)の規定による通知を受け、又は第百二十八条(青色申告の取りやめ)に規定する届出書の提出をした日以後一年以内にその申請書を提出したこと。」とあります。

この規定から,青色申告承認の取消通知を受けた日以後,1年間は申請することができないということになります。

そして,青色申告承認の取消通知の翌期(取消通知から1年経過した後)は青色申告の承認申請をすることしかできず,

(青色申告の承認の申請)

法人税法第123条 当該事業年度以後の各事業年度の前条第一項各号に掲げる申告書を青色の申告書により提出することについて同項の承認を受けようとする内国法人(連結申告法人を除く。)は、当該事業年度開始の日の前日までに、当該事業年度開始の日その他財務省令で定める事項を記載した申請書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。

という規定から,青色申告承認は,申請の翌期から,適用を受けます。

その結果,翌々期からの青色申告が最短となります。

具体的にいうと,

12月末決算の会社で,平成28年2月に取消通知がきた場合,

平成29年2月までは申請できません。

平成29年3月から承認申請が可能で,平成29年12月末日までに申請すれば,平成30年1月から青色申告をすることができます。

配偶者の税額軽減の注意点

前回の記事では,配偶者の税額軽減について,概要を説明しました。

今回は,配偶者の税額軽減の注意点に関する記事です。

 

まず,気をつけなければならないのは,配偶者の軽減は,配偶者が実際に受け取った相続財産を基礎に計算されるため,相続税の申告期限までに分割されていない財産は,原則として,税額軽減の対象にならないということです。

相続税の申告期限とは,被相続人が亡くなった日の翌日から10か月以内です。

 

ただし,相続税の申告の際に添付書類として,「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出して,3年以内に相続財産を分割すれば税額軽減を受けることができます。

3年以内に分割できなくとも,申告期限後3年経過した日の翌日から2か月以内に,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認請求書」を税務署に提出し,税務署長の承認を受けていれば,分割できない事情がなくなった後4か月以内に,更正の請求手続をすることで,税額軽減の対象となります。

以前の記事にも書きましたが,相続でもめると3年ぐらいはあっという間に経過してしまいます。

いつまでに,何を何処に提出しなければならないのかは,しっかりと記録し,忘れないようにしましょう。

配偶者の取得した税額の基礎となる財産が1億6000万円(基礎控除等の計算後の配偶者の取得額)で,配偶者の税額軽減を受けられる額も1億6000万円であったのに,これらの手続を忘れた場合,他の特例などを考慮せず単純に相続税を計算すると,

(1億6000万円-1700万円)×40%=5720万円

このように,5720万円の相続税がかかってきます。

絶対に忘れないようにしましょう。

 

他にも,配偶者の税額軽減を受けられなくなる場合や,配偶者に法定相続分以上に1億6000万円ギリギリまで財産を集中させることでかえって税金面で,後々損をすることもありますので,ご心配な方は,弁護士等の専門家にご相談ください。

配偶者の税額の軽減

相続税減額の特例について,よく使われるものに配偶者の税額の軽減が上げられます。

配偶者の税額の軽減は,被相続人の配偶者が取得する相続財産について一定の範囲で相続税がかからない制度です。

一般的に,配偶者の財産により生活されている方も多いですので,遺された配偶者のその後の生活に配慮して,特に大きな税額の軽減が認められています。

配偶者の税額軽減により,1億6000万円か法定相続分のどちらか多い金額までは相続税はかかりません。(相続税法19条の2第1項)

 

ちなみに,法定相続分とは,民法上認められた相続人の相続割合のことをいいます。 例えば,①配偶者と子供が相続人である場合,配偶者の法定相続分は2分の1となります(民法900条1号)。

②配偶者と直系尊属が相続人である場合は, 配偶者の法定相続分は3分の2となります(民法900条2号)。

③配偶者と兄弟姉妹が相続人である場合は, 配偶者の法定相続分は4分の3となります(民法900条3号)。

 

 

 

参照条文 抜粋

(配偶者に対する相続税額の軽減)

第一九条の二 被相続人の配偶者が当該被相続人からの相続又は遺贈により財産を取得した場合には、当該配偶者については、第一号に掲げる金額から第二号に掲げる金額を控除した残額があるときは、当該残額をもつてその納付すべき相続税額とし、第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額以下であるときは、その納付すべき相続税額は、ないものとする。

一 当該配偶者につき第十五条から第十七条まで及び前条の規定により算出した金額

二 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の総額に、次に掲げる金額のうちいずれか少ない金額が当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額のうちに占める割合を乗じて算出した金額

イ 当該相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格の合計額に民法第九百条(法定相続分)の規定による当該配偶者の相続分(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続分)を乗じて算出した金額(当該被相続人の相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人)が当該配偶者のみである場合には、当該合計額)に相当する金額(当該金額が一億六千万円に満たない場合には、一億六千万円)

生命保険金と相続税

名古屋の弁護士の内堀です。

前回の記事でも述べたように,生命保険金は相続財産ではありません。

ならば,相続税がかからないのではないか,相続財産を被相続人が亡くなる前に保険料としておけば生命保険金全額に相続税はかからず節税になるのではないかと思われる方がいらっしゃるかもしれませんが,それは違います。

 

相続税法3条1項1号抜粋

第三条  次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす。この場合において、その者が相続人であるときは当該財産を相続により取得したものとみなし、その者が相続人以外の者であるときは当該財産を遺贈により取得したものとみなす。

一  被相続人の死亡により相続人その他の者が生命保険契約を取得した場合においては、当該保険金受取人について、当該保険金の金額の当該契約に係る保険料で被相続人の死亡の時までに払い込まれたものの全額に対する割合に相当する部分

 

簡単にまとめると,被相続人が保険料を払い,相続人が受取人となった場合,税務上は,保険金は相続により取得したものとみなし,課税の対象となるということです。

いわゆる,「みなし相続財産」といわれています。

 

ただし,生命保険金全額が相続税の対象となるのではなく,一定金額は非課税となることが認められています。

 

第十二条  次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。

五  相続人の取得した第三条第一項第一号に掲げる保険金については、イ又はロに掲げる場合の区分に応じ、イ又はロに定める金額に相当する部分

イ 第三条第一項第一号の被相続人のすべての相続人が取得した同号に掲げる保険金の合計額が五百万円に当該被相続人の第十五条第二項に規定する相続人の数を乗じて算出した金額(ロにおいて「保険金の非課税限度額」という。)以下である場合 当該相続人の取得した保険金の金額

ロ イに規定する合計額が当該保険金の非課税限度額を超える場合 当該保険金の非課税限度額に当該合計額のうちに当該相続人の取得した保険金の合計額の占める割合を乗じて算出した金額

 

簡単にまとめると,「法定相続人の人数×500万円」については,非課税となります。

この限度額の範囲において,相続税の節税が可能です。

 

このように,民法上の相続と税務上の相続は,その仕組みがまったく同じというわけではありませんので注意が必要です。

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例についての注意点

名古屋の弁護士の内堀です。

前回は,納める相続税が少なくなる可能性のある小規模宅地等についての相続税の課税価額の計算の特例(以下,小規模宅地の特例と省略します。)について記事を書きました。

今回は,相続税の申告時に相続財産が未分割である場合の注意点を書きたいと思います。

 

前提として,相続税の申告期限は,相続と知った時の翌日から10カ月以内です。期限後申告には,延滞税が課されます。

そして,相続税申告時に,遺産分割がされていなくとも,一旦は法定相続分に従い,相続税を納めなければなりません。

このような未分割の状態での相続税の申告の際には,小規模宅地の特例を適用することはできません。

ただし,申告期限後3年以内の分割見込書を税務署に提出すれば,3年の遺産分割時に小規模宅地の特例の適用を受けることができます。

 

この3年という期間が曲者です。

遺産分割でもめていれば,3年間程度はあっという間に過ぎます。

他方,遺産分割の紛争で頭がいっぱいの状況で,小規模宅地の特例の適用条件について記憶し続けるには,3年間は長すぎます。

そして,何もせず,3年経過したのちに遺産分割の合意をしても,小規模宅地の特例は適用されません。

前回の記事のように1億円の土地という相続財産があり,妻と子供の二人がいる場合であれば,小規模宅地の特例の適用がある場合には支払わずに済んだ相続税,合計770万円を納めなければならない事態に陥ります。

 

この3年という期間をしっかり覚えていれば,仮に未分割の状態で3年が経過しそうであっても,申告期限後3年経過時から2カ月以内に,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出,税務署の承認を受けることで,小規模宅地の特例の適用が可能となります。

この場合,判決の確定の日など遺産が分割できる状態になったときから4ヶ月以内に分割を行えば,小規模宅地の特例の適用を受けることができます。

 

相続は,あらゆることに意識を向けていなければ,大きな失敗をする可能性があります。慎重に対応することが必要です。

 

相続税に関して名古屋で税理士をお探しの方はこちら

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について

相続財産には相続税が課せられます。

しかし,不動産を所有している場合,不動産の価値自体は高い傾向にありますが,現金が手許にあるとは限りません。

そのような場合にまで,画一的に相続税を課していれば,今まで住んでいたところを,相続を契機に追い出されかねません。

そのような,事態をできる限り防ぐため,租税特別措置法は,小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例を設けています。

いわゆる,小規模宅地の特例は,一定の要件を満たせば,評価額が5割から8割減額されることになります。

 

例えば,被相続人の相続財産が1億円の土地のみで,相続人が妻と子供一人だった場合,(ここでは,配偶者の税額軽減の特例は無視します)

小規模宅地の特例がなければ,

基礎控除 3000万円+600万円×2=4200万円

1億円-4200万円=5800万円が課税される相続財産額となり,

妻・子供の法定相続分は,それぞれ2900万円ですから

2900万円×15%(相続税率)-50万円(控除額)=385万円がそれぞれの相続税となります。

相続財産に現預金がなく,妻・子どもにも財産がなければ,妻・子どもはこの土地を売るなどして現金を作らなければならなくなります。

 

他方,小規模宅地の特例の適用により,評価額が8割減額されれば,土地は2000万円と評価され,4200万円の基礎控除額よりも少額なため,相続税は0円となります。

妻・子どもは,この土地を追い出されることなく,住み続けることが可能となるのです。

 

小規模宅地の特例を利用するには,条件がありますので専門家にご相談ください。

また,生前であれば,小規模宅地の特例の適用を見据えて積極的に行動することもできる可能性があります。

 

相続税に関する税理士法人心のサイトはこちら

限定承認と税金

名古屋の弁護士の内堀です。

今回は,限定承認について,税金との関係で記事を書きたいと思います。

 

 

民法第922条

「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。」

 

限定承認とは,簡単にいえば,相続人が被相続人の積極財産の範囲内で,被相続人の消極財産の責任を負うという制度です。

被相続人の積極財産が借金等の消極財産を差し引いてもまだ残っているのであればそれを相続し,借金のほうが多ければ帳消しにされるという一見便利な制度です。

しかし,実際には,あまり利用されることはありません。

その理由として,相続人全員の同意が必要だとか,相続財産目録を作成し限定承認申立書を家庭裁判所に提出しなければならないとか,手続きが煩雑であることがよくあげられます。

さらに,税金との関係でも大きなデメリットを負います。

それは,みなし譲渡所得税がかかるということです。

 

所得税法59条1項

次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす

 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

 

この条文から,限定承認をすると,被相続人の全ての財産を時価で売却したのと同じ額の贈与があったものとして,譲渡所得税が発生します。

譲渡所得があったものとして税金が発生するわけですから,3000万円+法定相続人×600万円の基礎控除等も適用されません。税率も相続税と譲渡所得税では異なります。

このため,財産がマイナスになる場合は税金が増えることにさほどの意味はないのですが,財産がプラスであったとき税金分目減りしてしまう危険性があるのです。

相続税の基礎控除額について

(遺産に係る基礎控除)

相続税法第15条  相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。

 

相続の際に相続税がどのくらい発生するのか,相続するすべての人に発生するものなのか不安を抱えている人もいらっしゃると思います。

しかし,相続税は必ず発生するわけではありません。

相続税法は,相続財産が一定金額を超えなければ相続税が発生しない仕組みをとっています。

相続税法15条は3000万円+600万円×法定相続人数の金額を基礎控除額と定めており,それ以下の相続財産であれば,相続税は発生しません。

 

現在,相続税を払わなければならないケースは1割弱程度と言われています。

また,土地・建物を相続する場合は,相続税の軽減措置があります。

これから,少しずつその説明もしていこうと考えています。