固定資産税と相続(連帯納付義務) 後半

今回も,7月と同じく固定資産税について書いていきます

平成30年4月に名古屋の土地の所有者Aが亡くなり,相続人Bと相続人Cがいて,平成31年1月1日時点でも,相続人BC間で分割がされず共有状態であることが前提です。

 

平成31年1月1日時点での土地の所有者は,共有者であるBとCですので,BとCが納税義務者となります。Aの納税義務を承継したわけではありません。

 

地方税法第10条の2 共有物、共同使用物、共同事業、共同事業により生じた物件又は共同行為に対する地方団体の徴収金は、納税者が連帯して納付する義務を負う。

 

この規定を根拠に連帯納税義務があるとされ,自治体は,Bさん又はCさん一人に対して,固定資産税の納付を求めることができ,2分の1は別の相続人が所有しているから半分以上は固定資産税を納付しない!と拒否することはできません。

 

では,前回の記事の内容に戻りますが,

Aが亡くなった年の固定資産税,また,それ以前に未納の固定資産税があった場合にも連帯納税義務があるのでしょうか。

この点について,地方税法からすると,連帯納付義務はなく,相続人は相続分に応じた按分額の責任を負えば足りると考えます(私見)。

 

ただし,実務上,未納額等の固定資産税の通知書で,相続人ごとに按分したものは見たことがありません。

相続人の内の誰か一人に,全額分の通知書が来ることがほとんどです。

ただし,自治体のHPの記載を調べてみると,相続人には,連帯納付義務がありますという記載はあるのですが,根拠としては,地方税法第10条の2(共有者に連帯納付義務があるという規定)をあげているものがほとんどでした。

おそらく実務上,被相続人が亡くなった年の固定資産税及び未納の固定資産税について,一人の相続人が自分の相続分の割合以上の支払い,後に他の相続人と清算をすることがほとんどで,自治体に対し,自分の相続分の割合以上の支払いを拒否する人はあまりいないと思われます。

 

地方税法を熟知している人は少ないと思いますが,そういう場合は,条文を一つ一つ丁寧に調査確認する必要があります。http://www.lawyers-kokoro.com/

固定資産税と相続(連帯納付義務)前半

今日は,固定資産税の納税義務者が亡くなられた場合,固定資産税は誰が払うべきなのか,連帯納付義務があるのかについて,考えたいと思います。

ちなみに,文献や自治体のHP等を調べても,明確に記載されているものはなかったので,あくまでも私見で,今後訂正するかもしれません。

 

例えば,平成30年4月に名古屋の土地の所有者Aがなくなり,相続人Bと相続人Cがいると仮定します。なお,平成31年1月1日時点でも,相続人BC間で分割がされず共有状態であったとします。

 

まず,固定資産税とは,毎年1月1日時点の所有者に課税される税金です。

地方税法第359条 (固定資産税の賦課期日)

固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。

 

ですので,4月にAがなくなったからといって,4月までの固定資産税はA名義で納付を求められ,それ以降の固定資産税は相続人名義での納付が求められるということはありません。

あくまでも,1月1日時点で土地の所有者であったAに固定資産税が課税されます,ただし,Aがなくなった場合は,相続人に納税義務が承継されます。

 

地方税法第9条1項(相続による納税義務の承継)

相続(包括遺贈を含む。以下本章において同じ。)があつた場合には、その相続人(包括受遺者を含む。以下本章において同じ。)又は民法(明治二十九年法律第八十九号)第九百五十一条の法人は、被相続人(包括遺贈者を含む。以下本章において同じ。)に課されるべき、又は被相続人が納付し、若しくは納入すべき地方団体の徴収金(以下本章において「被相続人の地方団体の徴収金」という。)を納付し、又は納入しなければならない。ただし、限定承認をした相続人は、相続によつて得た財産を限度とする。

 

そして,相続人が複数いる場合には,相続人が相続分により按分して納付義務を負います。

地方税法第9条2項

前項の場合において、相続人が二人以上あるときは、各相続人は、被相続人の地方団体の徴収金を民法第九百条から第九百二条までの規定によるその相続分によりあん分して計算した額を納付し、又は納入しなければならない。

 

以下,8月の記事に続く

生前贈与と相続税対策

本日は,生前贈与の注意点をいくつか書いていきます。

 

相続税は,相続開始時における相続財産を評価して,相続税評価額を確定した上で算出される税金です。

ということは,相続開始日までに事前に相続人に贈与をしておけば,相続税が少なくなります。

ただし,贈与の額によっては,贈与税が課されます。

一般的に,同じ額であれば,贈与税の税率のほうが相続税の税率よりも高いので注意が必要です。

 

暦年贈与について

贈与税には,毎年(暦年)110万円の基礎控除があるので,110万円以下の贈与であれば,贈与税はかかりませんし,申告も不要です。

ただし,相続開始日から3年以内の相続人に対する贈与は,110万円の基礎控除額以内の贈与であっても相続税の計算の基礎となる財産として加算されます。

このような加算を避けるためには,法定相続人ではない方に贈与するのがおすすめです。

例えば,被相続人予定者の孫,法定相続人の配偶者に贈与するという方法も考えられます。

 

相続時精算課税について

相続時精算課税とは,一定額(2500万円)まで贈与時に贈与税がかからないかわりに,相続の時に贈与時の評価額で相続税の計算の基礎に加算するという制度です。

相続財産の先渡しというイメージで良いかと思います。

そのため,現金で贈与する場合は,同じ額が相続税の計算の基礎に加算されるので,結局,贈与しなかった場合と同じ相続税を払うことになります。

他方,値上がりが見込まれる土地や株式を2500万円分相続時精算課税を利用して贈与しておけば,相続開始時に,その土地や株式が値上がりしていたとしても,相続開始時において,相続税の計算の基礎として2500万円加算するだけですみますので,値上がり分だけ相続税を少なくすることができます。

 

その他にも国は,生前贈与を勧めており,配偶者に対する贈与,住宅資金の贈与,教育資金の贈与,結婚子育て資金の贈与の場合に,一定の要件のもと,贈与税の優遇をしています。

 

名古屋に住んでいる方はお気軽にご相談ください。

相続税とタワーマンション節税

名古屋駅周辺は,2027年にリニア開業が予定されていることもあり,地価が上昇傾向にあり,また,20階以上のタワーマンションも建設が続いています。

 

皆さんのなかには,不動産を購入することで,相続税を減らすことができると聞いたことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。

その仕組みを説明していきたいと思います。

 

相続財産として,現金1億円があったとします。

この場合,現金1億円は,当たり前ですが,1億円として評価され,1億円が相続税評価額となり,相続税が課税されます。

これに対し,1億円で,市場価格1億円の土地を購入したとします。

土地の相続税評価額は,市場価格と異なります。

土地の相続税評価額は,路線価方式又は倍率方式のどちらかで算出され,一般的に売買価格の8割程度の評価になるといわれています。

とすれば,市場価格1億円の土地は,8000万円程度の評価額となり相続税が課税されます。

このように,2000万円分相続財産を減少させ,相続税を節税することができます。

 

上記の例では,相続税評価額が市場価格の8割と想定して計算しておりますが,この割合は平均的な例を出しただけで,実際の割合は,個々の土地によって違います。

そして,取引価格に比べ相続税評価額の低い不動産を購入できれば,より節税効果が高まります。

 

取引価格に比べ相続税評価額の低い不動産として,よく話題になるのがタワーマンションです。

マンションを購入した場合,専有部分だけでなく,マンションの敷地も専有面積按分で所有権を得ることになります。

タワーマンションの場合,一等地の敷地に建っていることが多いので,その分敷地の評価額が高くなりますが,戸数が多く按分した土地の持ち分は少なくなることもあり,相続税評価額は,市場価格に比較して8割以下となることも多いです。

また,タワーマンションは,最上階の部屋と1階の部屋では,かなり売買価格が異なるのに対し,相続税評価額の計算方法は一緒となります。

例えば,被相続人が,タワーマンションの1階部分の部屋を1億円で購入した場合,不動産の相続税評価額は7000万円(市場価格の8割という一般的な割合よりも低い額を想定しています。)として,3000万円分相続財産を低く評価できるのに対し,最上階の部屋を1億5千万円で購入した場合,相続税評価額は1階と同じく7000万円となるので,8000万円分相続財産を低く評価できることになります。

ただし,2017年以降に建設されたタワーマンションの場合,タワーマンションの上層部分の固定資産税の額を高く計算すると税制が改正されたように,相続税評価額の算出方法が今後変化する可能性もありますし,相続開始前直前にタワーマンションを購入し,相続人が比較的早期に売却するという,まさに典型的なタワーマンション節税が否認された事例もありますので,注意が必要です。

安易にタワーマンション節税という言葉に踊らされず,相続税のシミュレーションと各人にふさわしい生前対策をしっかりと検討すべきといえます。

相続税対策と養子について

4月に入り,名古屋も少しずつ暖かくなってきました。

 

本日は,養子と相続税対策について書きたいと思います。

相続税は,一定以上の相続財産がある場合に,課せられます。相続財産に関わらず支払わなければならない税金ではありません。

平成27年改正以後,3000万円と600万円×法定相続人の人数の合計額以上の相続財産がある場合に,相続税が課されるようになりました。

3000万円と600万円×法定相続人の人数の合計額を基礎控除額といいます。

法定相続人には,養子も含まれますので,養子縁組をすることで,基礎控除額を増やし,相続税対策になるといえます。

しかし,養子を増やし,無制限に基礎控除額を増やすことができるわけではありません。

相続法15条2項

前項の相続人の数は、同項に規定する被相続人の民法第五編第二章(相続人)の規定による相続人の数(当該被相続人に養子がある場合の当該相続人の数に算入する当該被相続人の養子の数は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める養子の数に限るものとし、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。

一 当該被相続人に実子がある場合又は当該被相続人に実子がなく、養子の数が一人である場合 一人

二 当該被相続人に実子がなく、養子の数が二人以上である場合 二人

 

この様に,被相続人に実子がいる場合には,基礎控除額の計算の基礎となる養子の人数は1人まで,被相続人に実子がいない場合には,基礎控除額の計算の基礎となる養子の人数は2人までに制限されています。

なお,税法上の養子の人数が制限されているだけですので,民法上養子の数は制限されていません。

 

ただし,養子縁組すれば,相続人となる予定の人達にとっては,自分の相続分が少なくなることを意味しますので,相続人になる可能性がある人達を交えてじっくり話し合う必要があります。

単に,相続税だけに目を向けるのではなく,様々な視点から考えた上で,相続税対策をする必要がありますので,専門家にご相談されることをおすすめします。

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税務調査と「調査の終了の際の手続に関する同意書」

 

本日は,税務調査の手続きに関するお話をしようと思います。

 

税務調査があると,我々税理士が,税務調査の対象となっている依頼者(納税義務者)に,「調査の終了の際の手続に関する同意書」という書面に,印鑑を押していただくようお願いすることがあります。

 

なぜ,このような書類が必要になるかというと,国税通則法に以下のような定めがあるからです。

(調査の終了の際の手続)

第74条の11

1項 税務署長等は、国税に関する実地の調査を行つた結果、更正決定等(第三十六条第一項(納税の告知)に規定する納税の告知(同項第二号に係るものに限る。)を含む。以下この条において同じ。)をすべきと認められない場合には、納税義務者であつて当該調査において質問検査等の相手方となつた者に対し、その時点において更正決定等をすべきと認められない旨を書面により通知するものとする。

2項 国税に関する調査の結果、更正決定等をすべきと認める場合には、当該職員は、当該納税義務者に対し、その調査結果の内容(更正決定等をすべきと認めた額及びその理由を含む。)を説明するものとする。

3項 前項の規定による説明をする場合において、当該職員は、当該納税義務者に対し修正申告又は期限後申告を勧奨することができる。この場合において、当該調査の結果に関し当該納税義務者が納税申告書を提出した場合には不服申立てをすることはできないが更正の請求をすることはできる旨を説明するとともに、その旨を記載した書面を交付しなければならない。

5項 実地の調査により質問検査等を行つた納税義務者について第七十四条の九第三項第二号に規定する税務代理人がある場合において、当該納税義務者の同意がある場合には、当該納税義務者への第一項から第三項までに規定する通知等に代えて当該税務代理人への通知等を行うことができる

 

長くて分かりづらいですが,簡単に言うと,税務署は,税務調査の終了の際して,原則として,調査結果を納税義務者に説明する必要があるということです。

ただし,「納税義務者の同意」があれば,税務署は,税務代理人たる税理士に説明等をすれば足ります。

逆にいうと,納税義務者の同意がなければ,税務代理人であっても,納税義務者の代わりに税務署からの説明等を受けることができないということです。

 

それくらい,税務調査の終了の際の納税義務者に対する説明について,国税通則法は重要視しているということです。

 

なお,この「同意」は,条文上,書面であることを要件としておりませんので,厳密には,口頭でも同意があれば足ります。

そのため,地域,調査官によって,書面を求められたり,そうではなかったりします。

 

税務調査でお困りの際には,税理士法人心・弁護士法人心にご相談ください。

過払い金と確定申告

名古屋の内堀です。

今年も確定申告の時期がやってまいりました。申告期限最終日に焦らないようにしていきましょう。

 

少し話は変わりますが,私が所属する名古屋の事務所では,過払いの請求について弁護士に相談に来られる方が多く,また,実際に過払い金を取り戻すことができた方がたくさんいます。

 

ただ,過払い金というお金を取得することで,確定申告が必要になってくるのではないかとご不安に思われる方もいらっしゃるので,本日は,過払い金と確定申告をテーマに記事を書いていきたいと思います。

 

そもそも,過払い金を請求し,過払い金を取り戻せたお金の中には,払いすぎた利息以外のものが含まれることがあります。

それは,過払い金利息です。

過払い金利息は,過払い金元本(これが払いすぎた利息そのものです。)が発生してから返還されるまで,年間5%の割合で,発生していきます。

 

過払い金元本に関しては,もともと払う必要のなかったお金が返還されただけなので,所得があったとはいえず,課税関係は生じません。

つまり,確定申告は不要です。

 

しかし,過払い金利息に関しては,その支払いを受けた日の属する年に雑所得があったことになります。

給与所得者の場合,年末調整によって,所得税額が確定し,基本的には,確定申告は不要となることは,皆さんご存知だと思います。

しかし,今回のように,雑所得の額によっては確定申告が必要(所得税法121条参照)となってきます。(雑所得の額以外にも確定申告が必要となる場合がありますがここでは割愛します。)

具体的には,過払い金利息が20万円を超える場合には,確定申告が必要となります。

 

過払い金利息だけで20万円を超える場合というのは,過払い金元本が多額であったり,過払い金元本の発生から返還までが長期間である場合に限られますが,注意が必要です。

 

なお,過払い金の発生の原因である借り入れが事業のために行われたもので,借入返済の際に支払った利息を経費としていた場合は,この記事の内容とは違った取扱になりますので,詳しくは専門家にご相談ください。

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孫養子と2割加算

名古屋の弁護士の内堀です。

 

今回は,孫養子に関係する相続税の規定の話をしようと思います。

 

相続税対策として,孫を養子にする方法が有名です。

基礎控除は,「3000万円+法定相続人の数×600万円」という計算をするので,孫を養子にすることで,600万円分の節税になります。ただし,孫養子が法定相続人となれば,当たり前ですが,孫養子にも法定相続分に応じた相続財産を取得する権利がありますし,遺言等で孫養子に一切の財産を承継させないとしていたとしても,遺留分が認められます。

そのため,孫養子の行動次第では,新たな相続紛争の種が生まれることになります。

推定相続人が全員で,孫養子について節税のメリットだけでなく,どのようなデメリットがあるのかを検討する等,孫養子という相続税対策をするには,慎重な対応が求められると思います。

 

また,孫養子の場合は,相続税に関して不利な規定が相続税法に定められています。

 

(相続税額の加算)

第18条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。

2 前項の一親等の血族には、同項の被相続人の直系卑属が当該被相続人の養子となつている場合を含まないものとする。ただし、当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつている場合は、この限りでない。

 

この規定から,孫養子は原則として,相続税が通常の場合よりも2割加算されます。

ただし,孫養子が代襲相続人としての地位も有する場合には,2割加算の対象とはなりません。

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死亡届について

名古屋の弁護士の内堀です。

12月に入ったというのに,名古屋は時々汗ばむような陽気で,寒がりな自分としてはありがたいです。

 

今日は,死亡届に関することを書こうと思います。

人が亡くなったとき,最初にする手続きの一つとして,死亡届の提出があります。

 

届出義務者は,死亡届7日以内に届け出する義務があります。

誰が届出義務者かという定めは,戸籍法にあります。

第86条1項

死亡の届出は、届出義務者が、死亡の事実を知つた日から七日以内(国外で死亡があつたときは、その事実を知つた日から三箇月以内)に、これをしなければならない。

 

死亡届が出されていなければ,火葬を行うことができないなどの不都合があります。

また,正当な理由なく死亡届を出さない場合には罰則が定められています。

 第135条

正当な理由がなくて期間内にすべき届出又は申請をしない者は、5万円以下の過料に処する。

 

最近は,孤独死が社会問題化となっておりますが,賃貸等で一人暮らしの方がなくなった場合は,誰が死亡届を出さなければならないのでしょうか。

その点についても,戸籍法に定めがあります。

第87条1項

左の者は、その順序に従つて、死亡の届出をしなければならない。但し、順序にかかわらず届出をすることができる。

第一 同居の親族

第二 その他の同居者

第三 家主、地主又は家屋若しくは土地の管理人

2項 死亡の届出は、同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人及び任意後見人も、これをすることができる。

 

戸籍法の定めから,後見する人がいない天涯孤独の方が賃貸物件で孤独死した場合は,大家さんといった賃貸物件の管理人らが死亡届を出す必要があるかもしれないので注意が必要です。

 

相続税と上場株式の評価(特に,課税時期が土日祝日のとき)について

名古屋の税理士兼弁護士の内堀です。

最近名古屋も肌寒くなる日が増えてきました。みなさま,風邪をひかないようにお気をつけください。

 

さて,本日は,相続の際,上場株式をどのように評価するのかを説明したいと思います。

国税庁によると

財産評価基本通達169

上場株式の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。

(1) (2)に該当しない上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所(国内の2以上の金融商品取引所に上場されている株式については、納税義務者が選択した金融商品取引所とする。(2)において同じ。)の公表する課税時期の最終価格によって評価する。ただし、その最終価格が課税時期の属する月以前3か月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額(以下「最終価格の月平均額」という。)のうち最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額によって評価する

(2) 負担付贈与又は個人間の対価を伴う取引により取得した上場株式の価額は、その株式が上場されている金融商品取引所の公表する課税時期の最終価格によって評価する。

 

とあります。

簡単にいえば,課税時期(相続開始日)の最終価格,相続開始日の属する月の1か月前の最終価格の月平均額,2か月前の最終価格の月平均額,3か月前の最終価格の月平均額の中で最も低い金額で評価できるということです。

 

なお,課税時期(相続開始日)の最終価格ですが,課税時期が休日で株式市場が開いておらず,株価が存在しない場合はどうするのでしょうか。

 

財産評価基本通達171

169≪上場株式の評価≫の定めにより上場株式の価額を評価する場合において、課税時期に最終価格がないものについては、前項の定めの適用があるものを除き、次に掲げる場合に応じ、それぞれ次に掲げる最終価格をもって課税時期の最終価格とする。

(1)

(2)又は(3)に掲げる場合以外の場合 課税時期の前日以前の最終価格又は翌日以後の最終価格のうち、課税時期に最も近い日の最終価格(その最終価格が2ある場合には、その平均額)

 

との定めがあります。

 

例えば,相続開始日が土曜日であるなら,金曜日の終値が課税時期の最終価格となります。

このこと知らず,相続開始日が土曜日であるにもかかわらず,相続開始日以後のいちばん近い平日(月曜日)の株価を最終価格とする方もいますので,注意が必要です。

民法改正と遺留分について

名古屋では,台風が過ぎ去ったものの,夏の様な気候が戻ってきています。

弁護士の内堀です。

 

今回は,民法改正の一部について書いてみたいと思います。

 以前,不動産と遺留分について,記事を書きました。

その時は,

「相続財産が不動産しかない場合,遺留分権利者は原則として,不動産の持分について移転登記を請求することしかできないのですが,受遺者が,金銭で賠償したいと反論した場合にのみ,遺留分を現金でもらうことができます。」と書きました。

 

このような現行法では,遺留分減殺請求権が行使されることで,遺贈の目的物の土地や非上場株式が共有状態になり,権利関係が複雑になってしまっていました。

 また,遺留分権利者には,現物を取得するか,金銭を取得するかの選択肢が与えられていない点も問題視されていました。

 

このような状況のもと,民法の改正がされ,以下のような条文が創設されました。

改正民法第1046条1項

 遺留分権利者及びその承継人は、受遺者(特定財産承継遺言により財産を承継し又は相続分の指定を受けた相続人を含む。以下この章において同じ。)又は受贈者に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払を請求することができる。

 

この条文により,改正民法施行後は

遺留分権利者は,遺留分侵害額に相当する金銭の支払いのみを請求することにできるようになりました。

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葬式費用と債務控除

名古屋の税理士兼弁護士の内堀です。

 

今回は,債務控除のうち,一番金額が大きくなることが多い葬式費用について,説明していきます。

 

まず,相続税申告の際には,相続人の財産をすべて確認・評価し,プラスの財産からマイナスの財産を引いて,相続税の課税対象となる被相続人の財産の額を算出します。

プラスの財産から葬儀費用といったマイナスの財産を差し引くことを債務控除といいます。

 

なお,葬儀費用は,被相続人の死後に発生する債務なので,被相続人のマイナスの財産には当たらないようにも思えます。

しかし,人が亡くなれば,葬式は当然に行われるものであり,被相続人の財産から負担されるべきものであるという考え方から債務控除が認められています。

 

次に,債務控除が認められている葬儀費用の範囲が重要となります。

葬儀費用の範囲が間違っていれば,本来債務控除できるはずの額を少なく申告し,納付する必要のない相続税を納付してしまうということにもなりかねません。

逆に,本来債務控除できないものを債務控除して申告すれば,税務署が税務調査を行い,足りない相続税を納付するように指摘を受け,さらにペナルティを受ける可能性もあります。

 

葬式といっても,宗教の違いや地域の違いにより,その様式は様々ですし,葬儀費用の範囲を法律で厳格に定めることは難しいことから,何が債務控除できる葬式費用か国税庁が一定のルールを定めています。

そのルールによれば,葬式費用となるは,①葬式の際に,火葬や埋葬、納骨をするためにかかった費用(簡単に言えば葬儀会社に通常支払う費用です。),②葬儀会社への支払い以外で通常,葬式(お通夜含む)の際にかかる費用(飲食の費用,心付け等),③葬式の際にお寺に支払う読経料等のお布施,④死体の捜索,死体や遺骨の運搬にかかった費用,といったものが挙げられます。

他方,葬式費用とならないのは,①香典返しの費用,②墓石や墓地の購入費用,墓地借地料,③初七日,法事に関する費用,といったものが挙げられます。

葬儀会社に支払う費用で,初七日の費用が区別されている場合(内訳明細等で確認します。)は,初七日の費用を差し引いた上で,債務控除することになるといったことも必要なので,債務控除できるかどうかご心配であれば専門家にご相談されることをお勧めします。

相続税の納付の注意点

名古屋の弁護士・税理士の内堀です。

 

今回は,相続税の納付の際の注意点について,説明したいと思います。

 

相続税の申告と納付は,相続を知った日の翌日から10か月内に,被相続人の最後の住所地を管轄する税務署に対しておこなう必要があります。

例えば,名古屋市中区が最後の住所地であれば,名古屋中税務署に申告と納付をする必要があります。

 

相続税の納付方法として,分割や物納を原則として認められていません。現金一括払いが基本です。

預貯金が多ければそれでも問題ないのですが,ほとんどが不動産であったり,相続財産の分け方でもめていて,10か月以内に遺産分割協議がまとまらなかったりすると大変です。

特に,未分割で申告する場合は,相続税をおさえる各種特例の適用を受けられないため,予想よりも多くの相続税を納める必要が出てくることもあります。

なお,未分割申告の場合,分割されたあとに,申告をし直すことによって,払いすぎた相続税が戻ってくることもありますので,忘れずに申告をしましょう。

 

そのような原則があるものの,現金で相続税を納付することが困難であるという事情があれば,一定の条件のもと延納制度を利用することができます。

延納も困難な場合には,一定の条件のもと物納制度を利用することができます。

 

相続税の納付についてお困りの方は一度,専門家にご相談されることをおすすめします。

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公正証書遺言の保管期間

弁護士の内堀です。

本日は,公正証書遺言の保管期間についてお話したいと思います。

普通方式の遺言には,自筆証書遺言,秘密証書遺言,公正証書遺言の3種類があります。

このうち,自筆証書遺言,秘密証書遺言は,基本的に,遺言者本人が保存するものなので,保管期間を気にする必要がありません。紛失の恐れはありますが・・・

他方,公正証書遺言は,遺言の原本を公証役場が保存します。

公証役場はどの程度の期間,この原本を保存するのでしょうか。

 

公正証書遺言の原本保管期間は,原則二十年であると,公証人法規則に規定されています。

公証人法施行規則27条1項

公証人は、書類及び帳簿を、次の各号に掲げる区分に応じ、それぞれ当該各号に掲げる期間保存しなければならない。ただし、履行につき確定期限のある債務又は存続期間の定めのある権利義務に関する法律行為につき作成した証書の原本については、その期限の到来又はその期間の満了の翌年から十年を経過したときは、この限りでない。

一 証書の原本、証書原簿、公証人の保存する私署証書及び定款、認証簿(第三号に掲げるものを除く。)、信託表示簿 二十年

 

そうすると,60歳の時に公正証書遺言を作成したが80歳を越えて存命の場合,60歳の時に作成した公正証書遺言が破棄されてしまい,新しく公正証書遺言を作り直さなければならないのでしょうか?

 

その必要はありません。なぜなら,公証人法規則には,さらに,保存期間が満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは,その事由のある間保存しなければならないと,規定しているからです。

 

公証人法施行規則27条3項

第一項の書類は、保存期間の満了した後でも特別の事由により保存の必要があるときは、その事由のある間保存しなければならない。

 

公正証書遺言の場合,「保存の必要があるとき」とは,遺言者が生きていることを意味します。

ですので,安心して,公正証書遺言を作成していだければと思います。

なお,厳密にいえば,どの程度の期間が過ぎれば,保存の必要がなくなるとするのかは,公証役場ごとに取扱いがことなります。

遺言者が120歳程度の年齢に達する期間が経過するまで破棄しないという公証役場もあれば,破棄は一切しないという公証役場もあるようです。

名古屋駅前公証役場の場合は,120歳までは確実に保管しているとお聞きしたことがあります。

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固定資産税と準確定申告

名古屋の弁護士の内堀です。

 

前回は,固定資産税の納税通知書が来ていなくとも(納期の開始が未到来)債務控除できるかということをお話しました。

 

今回は,準確定申告の際に,納期の期限が未到来の固定資産税を経費とできるかをお話したいと思います。

 

被相続人が亡くなった日及び相続人がそのことを知った日が平成30年3月1日。平成30年1月1日時点において,名古屋中村区の不動産を所有し,その不動産を貸して賃料収入を得ている場合を例に考えてみます。

この場合,固定資産税等の納税通知書はささしま市税事務所から4月中に,被相続人の住所地又は手続きが済んでいれば相続人の住所地に送付されます。

そもそも,準確定申告とは,相続人が,被相続人の平成30年1月1日から死亡した日までの所得について,相続の開始があったことを知った日の翌日から4か月以内におこなう必要のある申告です。

平成30年3月1日に相続の開始を知っていたならば,平成30年7月1日が申告期限となっています。

例年通り,平成31年3月15日までに申告すればいいというわけではないことに注意が必要です。

 

 

そして,所得税法等は,経費とできる範囲について

 

所得税法第37条(必要経費) 

 その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

 

所得税法基本通達37-6(その年分の必要経費に算入する租税)

法第37条第1項の規定によりその年分の各種所得の金額の計算上必要経費に算入する国税及び地方税は、その年12月31日(年の中途において死亡し又は出国をした場合には、その死亡又は出国の時。以下この項において同じ。)までに申告等により納付すべきことが具体的に確定したものとする。ただし、次に掲げる税額については、それぞれ次による。

(3) 賦課税方式による租税のうち納期が分割して定められている税額 各納期の税額をそれぞれ納期の開始の日又は実際に納付した日の属する年分の必要経費に算入することができる。

とありますので,被相続人が亡くなったのが3月であれば,平成30年分の固定資産税等は,納期の開始日が到来しておらず,実際に納付することもできないので,経費とはならいないことになります。

固定資産税と債務控除

弁護士の内堀です。

 

今回は,相続税の計算の際に,まだ払っていない固定資産税を債務控除できるか,ということについて書いてみたいと思います。

例えば,平成30年1月1日時点において,名古屋市中村区の不動産を所有していれば,ささしま市税事務所から固定資産税等の納税通知書が,4月中に送付されます。

そして,被相続人が亡くなった日が平成30年1月2日であった場合,まだ納税通知書すら来ていない固定資産税を債務控除できるのでしょうか。

4月に納税通知書が来ることが確実ですが,相続開始日には,納税通知書が来ておらず,その額もわからない。債務控除できるか迷ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

 

前提として,固定資産税はその年の1月1日に当該不動産を所有している方に,賦課されます。

地方税法

(固定資産税の納税義務者等)

第三百四十三条 固定資産税は、固定資産の所有者・・・に課する

(固定資産税の賦課期日)

第三百五十九条 固定資産税の賦課期日は、当該年度の初日の属する年の一月一日とする。

 

また,相続法では,

(債務控除)

第十三条 相続又は遺贈(包括遺贈及び被相続人からの相続人に対する遺贈に限る。以下この条において同じ。)により財産を取得した者が第一条の三第一項第一号又は第二号の規定に該当する者である場合においては、当該相続又は遺贈により取得した財産については、課税価格に算入すべき価額は、当該財産の価額から次に掲げるものの金額のうちその者の負担に属する部分の金額を控除した金額による。

一 被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課を含む。)

第十四条 前条の規定によりその金額を控除すべき債務は、確実と認められるものに限る

2 前条の規定によりその金額を控除すべき公租公課の金額は、被相続人の死亡の際債務の確定しているものの金額のほか、被相続人に係る所得税、相続税、贈与税、地価税、再評価税、登録免許税、自動車重量税、消費税、酒税、たばこ税、揮発油税、地方揮発油税、石油ガス税、航空機燃料税、石油石炭税及び印紙税その他の公租公課の額で政令で定めるものを含むものとする。

 

と規定されています。

これらの規定から,相続開始日が平成30年1月2日である場合,平成30年1月1日に不動産を所有していた被相続人に固定資産税という公租公課が賦課されることは確実なので,固定資産税の額をを債務控除することができそうです。

相続開始日に,納税通知書が来ているか否か,すでに固定資産税を支払っているか否か,は関係ありません。

遺留分と不動産

名古屋も少しずつ暖かくなり,桜のきれいな季節となってきました。

弁護士の内堀です。

 

今回は,不動産と遺留分について,書いてみたいと思います。

 

相続財産が不動産しか無い時,絶対に不動産自体をもらいたいと主張する遺留分権利者もいますし,絶対に金銭をもらいたいと主張する遺留分権利者もいます。

 

法律上はどうなっているのでしょうか。

 

一般論として,日本の民法では,物の遺留分は,原則として,金銭ではなく,共有持分をもって清算されることになっています。

そのため,相続財産について,不動産しかない場合は,共有持分につき,不動産の移転登記請求権を請求できるにとどまり,遺留分権利者が,不動産の共有持分に相当する金銭を請求することはできません。

 

他方,遺留分を請求されている側(以後,受遺者といいます。)は,遺留分権利者と当該不動産を共有したくないと考えれば,遺留分権利者に対し,金銭で遺留分を支払う旨意思を表明し,遺留分に応じた金銭を支払うことで,移転登記請求を免れることができます。

 

以上をまとめると,相続財産が不動産しかない場合,遺留分権利者は原則として,不動産の持分について移転登記を請求することしかができないのですが,受遺者が,金銭で賠償したいと反論した場合にのみ,遺留分を現金でもらうことができます。

確定申告と医療費控除 3

弁護士の内堀です。

確定申告の期限も迫ってきました。

名古屋中村区の方であれば,ウインク愛知が確定申告会場となっています。

 

今回も医療費控除の話題の続きです。

医療費控除は単純に見えて意外に落とし穴が多く,医療費控除の対象になると思われているものが,対象でなかったり,医療費控除の対象にならないと思い込んでいたものが対象であったりします。

 

大雑把にいえば,治療目的で支出したものかどうかが,判断基準となります。

そのため,予防目的,健康維持促進目的の場合に支出したものは,医療費控除の対象になりません。

 

例えば,予防接種の料金を医療費控除の対象だと考えておられる方が多いですが,予防接種は基本的に予防目的であるため,医療費控除の対象にならないと考えておいた方が無難です。

 

また,病院までの交通費は医療費控除の対象にならないと思われている方が多いですが,実は医療費控除の対象となります。

ただし,基本的に公共交通機関を利用した場合の交通費が対象になり,特別な事情がなければタクシー代は医療費控除の対象ではありませんし,自家用車のガソリン代,駐車料金も同様です。

なお,公共交通機関を利用した場合は,しっかりと領収書等の証拠を残しておきましょう。

確定申告と医療費控除 2

名古屋の弁護士の内堀です。

今回は,医療費控除のお話の続きです。

 

Q 医療費の領収の原本は戻ってくるのですか。

医療費控除を受けたい場合,原則として,領収書原本を提出する必要があります。

何度も領収書を使い回すなど不正に利用されることを防ぐためです。

しかし,原本を手元においておきたいという方もいらっしゃると思います。

そんな方は,税務署の窓口で,領収書を手元においておきたい旨伝えましょう。

そうすると,税務署の職員は,領収書の内容をその場で確認したあと,確認済みの印を押して,領収書を返してくれます。

なお,内容の確認に時間がかかることもあるので注意が必要です。

また,領収書原本の提示を後日税務署から求められることもあるので,しっかりと保管しておきましょう。

また,郵送の場合は,領収書を返却希望である旨わかるようにして,返信用封筒を同封しておけば,後日領収書が返送されます。

また,電子申告システムを利用する場合は,医療費の金額,医療機関等の情報をデータとして送り,領収書原本を提出する必要が無いので,領収書を手元においておくことができます。

また,2018年からは,医療費控除の明細書を提出することで,領収書の原本を提出する必要がなくなりました。

確定申告と医療費控除 1

第1 確定申告と医療費控除

そろそろ,確定申告の時期がやってきました。名古屋市中村区に住んでいる場合は,名古屋中村税務署に申告することになります。

確定申告期間は,平成30年2月16日(金)から平成30年3月15日(木)で,平成29年1月1日から平成29年12月31日までの会計結果を税務署に報告しなければなりません。

この時期になると,確定申告に関していろいろと質問を受けることが多いのですが,その中でも医療費控除のことについて,よく聞かれます。

医療費控除について,よく聞かれる内容をいくつか説明していきたいと思います。

第2 医療費控除とは

そもそも,医療費控除とは,医療費をたくさん払った人に対して,税金を軽くする制度です。

平成30年3月15日までに申告する場合であれば,平成29年1月1日から平成29年12月31日の間に,自己又は自己と生計を同じくする配偶者その他親族のために医療費を支払った場合で,その額が一定額を越えるとき,所得控除を受けることができるのです。

医療費控除=支払った医療費合計額-保険金等の補填金額-(10万円又はその年の総所得金額が200万円未満の人は,総所得金額の5%の金額)という計算によって,医療費控除の対象となる金額が導き出されます。

保険金等の補填金額とは,高額療養費や出産育児一時金等も含まれます。

なお,保険金等の補填金額は,その保険金等に対応する支払済医療費の金額を限度として差し引きます。

例えば,ある怪我の治療のため医療費が15万円かかり保険金が20万円給付された場合,引ききれない5万円について他の怪我のために支払った医療費に補填して,医療費控除の金額を計算しないということです。

第3 よく聞かれる質問について

1 確定申告をする本人の医療費のみが医療費控除の対象ですか?

すでに,説明したとおり,生計を一にする配偶者・親族の医療費であれば対象になります。

成年した子どもであっても,親が金銭面も含めて生活の面倒を見ている場合であれば,生計を一にしているといえるでしょう。

なお,1年を通して生計を一にしている必要はなく,医療費の支出があった時点で生計を一にしていれば大丈夫です。

2 医療費控除は10万円以上の医療費を支払ってなければ,関係ありませんよね?

これもすでに説明したとおりです。

医療費控除は,その年の総所得金額等が200万円未満の人は,総所得金額等の5%の金額以上の医療費を支払っていれば,所得控除を受けることができます。

ですから,10万円以上の医療費を支払ってない場合でも,医療費控除を受けられる可能性があることに注意してください。