生命保険金は相続財産となるのか

基本的なことから説明していきます。

そもそも,「相続」とは,被相続人の死亡によって開始します(民法882条)

そして,相続人は,相続開始の時から,被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継します。ただし,被相続人の一身に専属したものは,この限りではありません(民法896条)

この相続によって,承継される「被相続人の財産に属した一切の権利義務」が相続財産,一般的には遺産と呼ばれるものです。

この相続財産の中には,プラスの財産(現金,預金,不動産等)だけでなく,マイナスの財産(借金等)も含まれています。

それでは,被相続人が生命保険に入っており,相続人が受取人となっていた場合,生命保険金は相続財産となるのでしょうか。

上述のように,相続財産とは,「被相続人の財産に属した一切の権利義務」です。

保険金は,保険契約に基づき受取人が受け取る受取人固有の財産ですから,相続財産には含まれません。

 

しかし,生命保険金は,特段の事情があれば,特別受益に準じて持ち戻しの対象となることもある(最高裁判決H16・10・29)ので,注意が必要です。

 

最高裁判決H16・10・29の抜粋

養老保険契約に基づき保 険金受取人とされた相続人が取得する死亡保険金請求権又はこれを行使して取得した死亡保険金は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産には当たらないと解するのが相当である。

もっとも,上記死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。

上記特段の事情の有無については,保険金の額この額の遺産の総額に対する比率のほか,同居の有無,被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係,各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである

 

さらに,「相続財産に含まれない」としても,「相続税の対象」とはなります。

相続税との関係については,次回の記事で書きたいと思います。

小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例についての注意点

名古屋の弁護士の内堀です。

前回は,納める相続税が少なくなる可能性のある小規模宅地等についての相続税の課税価額の計算の特例(以下,小規模宅地の特例と省略します。)について記事を書きました。

今回は,相続税の申告時に相続財産が未分割である場合の注意点を書きたいと思います。

 

前提として,相続税の申告期限は,相続と知った時の翌日から10カ月以内です。期限後申告には,延滞税が課されます。

そして,相続税申告時に,遺産分割がされていなくとも,一旦は法定相続分に従い,相続税を納めなければなりません。

このような未分割の状態での相続税の申告の際には,小規模宅地の特例を適用することはできません。

ただし,申告期限後3年以内の分割見込書を税務署に提出すれば,3年の遺産分割時に小規模宅地の特例の適用を受けることができます。

 

この3年という期間が曲者です。

遺産分割でもめていれば,3年間程度はあっという間に過ぎます。

他方,遺産分割の紛争で頭がいっぱいの状況で,小規模宅地の特例の適用条件について記憶し続けるには,3年間は長すぎます。

そして,何もせず,3年経過したのちに遺産分割の合意をしても,小規模宅地の特例は適用されません。

前回の記事のように1億円の土地という相続財産があり,妻と子供の二人がいる場合であれば,小規模宅地の特例の適用がある場合には支払わずに済んだ相続税,合計770万円を納めなければならない事態に陥ります。

 

この3年という期間をしっかり覚えていれば,仮に未分割の状態で3年が経過しそうであっても,申告期限後3年経過時から2カ月以内に,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出,税務署の承認を受けることで,小規模宅地の特例の適用が可能となります。

この場合,判決の確定の日など遺産が分割できる状態になったときから4ヶ月以内に分割を行えば,小規模宅地の特例の適用を受けることができます。

 

相続は,あらゆることに意識を向けていなければ,大きな失敗をする可能性があります。慎重に対応することが必要です。

 

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小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例について

相続財産には相続税が課せられます。

しかし,不動産を所有している場合,不動産の価値自体は高い傾向にありますが,現金が手許にあるとは限りません。

そのような場合にまで,画一的に相続税を課していれば,今まで住んでいたところを,相続を契機に追い出されかねません。

そのような,事態をできる限り防ぐため,租税特別措置法は,小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例を設けています。

いわゆる,小規模宅地の特例は,一定の要件を満たせば,評価額が5割から8割減額されることになります。

 

例えば,被相続人の相続財産が1億円の土地のみで,相続人が妻と子供一人だった場合,(ここでは,配偶者の税額軽減の特例は無視します)

小規模宅地の特例がなければ,

基礎控除 3000万円+600万円×2=4200万円

1億円-4200万円=5800万円が課税される相続財産額となり,

妻・子供の法定相続分は,それぞれ2900万円ですから

2900万円×15%(相続税率)-50万円(控除額)=385万円がそれぞれの相続税となります。

相続財産に現預金がなく,妻・子どもにも財産がなければ,妻・子どもはこの土地を売るなどして現金を作らなければならなくなります。

 

他方,小規模宅地の特例の適用により,評価額が8割減額されれば,土地は2000万円と評価され,4200万円の基礎控除額よりも少額なため,相続税は0円となります。

妻・子どもは,この土地を追い出されることなく,住み続けることが可能となるのです。

 

小規模宅地の特例を利用するには,条件がありますので専門家にご相談ください。

また,生前であれば,小規模宅地の特例の適用を見据えて積極的に行動することもできる可能性があります。

 

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限定承認と先買権

先日の記事では,限定承認の税制上のデメリットを強調しましたが,もちろんメリットもありますし,特定の場合には便利な制度でもあります。

その一つとして,先買権の行使が挙げられます。

例えば,ある程度相続人に金銭的余裕があり,被相続人たる父親の土地建物を相続放棄したくないが,父親の借金を全て負うことはできないという場合です。

通常,相続放棄や限定承認がされると,不動産は競売等により換価されることが多いです。

しかし,限定承認の手続きの場合,相続人が希望すれば,家庭裁判所に鑑定人を選任してもらい,その鑑定人が評価した額で,競売にかけられる前に優先的に相続財産の一部を買い取ることができるのです。(買い取ることは義務ではないので,鑑定額が高すぎれば,買わないという選択をすることもできます。)

このことを「先買権の行使」といいます。

このように,一般的には使いにくい制度であっても,特定の場合には非常にありがたい制度になることもありますので,相続の場合は様々な角度からの検討が必要です。

ただし,限定承認の場合,まずは,相続人全員の共有で法定相続分に従い相続登記をすることになります。

そのため,相続人が複数いる場合は,先買権の行使をした相続人に対してさらに共有持分の移転があり,別途,不動産取得税,登録免許税等の費用がかかってくるので注意が必要です。

限定承認と税金

名古屋の弁護士の内堀です。

今回は,限定承認について,税金との関係で記事を書きたいと思います。

 

 

民法第922条

「相続人は、相続によって得た財産の限度においてのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済すべきことを留保して、相続の承認をすることができる。」

 

限定承認とは,簡単にいえば,相続人が被相続人の積極財産の範囲内で,被相続人の消極財産の責任を負うという制度です。

被相続人の積極財産が借金等の消極財産を差し引いてもまだ残っているのであればそれを相続し,借金のほうが多ければ帳消しにされるという一見便利な制度です。

しかし,実際には,あまり利用されることはありません。

その理由として,相続人全員の同意が必要だとか,相続財産目録を作成し限定承認申立書を家庭裁判所に提出しなければならないとか,手続きが煩雑であることがよくあげられます。

さらに,税金との関係でも大きなデメリットを負います。

それは,みなし譲渡所得税がかかるということです。

 

所得税法59条1項

次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす

 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

 著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡(法人に対するものに限る。)

 

この条文から,限定承認をすると,被相続人の全ての財産を時価で売却したのと同じ額の贈与があったものとして,譲渡所得税が発生します。

譲渡所得があったものとして税金が発生するわけですから,3000万円+法定相続人×600万円の基礎控除等も適用されません。税率も相続税と譲渡所得税では異なります。

このため,財産がマイナスになる場合は税金が増えることにさほどの意味はないのですが,財産がプラスであったとき税金分目減りしてしまう危険性があるのです。

相続税の基礎控除額について

(遺産に係る基礎控除)

相続税法第15条  相続税の総額を計算する場合においては、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者に係る相続税の課税価格(第十九条の規定の適用がある場合には、同条の規定により相続税の課税価格とみなされた金額。次条から第十八条まで及び第十九条の二において同じ。)の合計額から、三千万円と六百万円に当該被相続人の相続人の数を乗じて算出した金額との合計額(以下「遺産に係る基礎控除額」という。)を控除する。

 

相続の際に相続税がどのくらい発生するのか,相続するすべての人に発生するものなのか不安を抱えている人もいらっしゃると思います。

しかし,相続税は必ず発生するわけではありません。

相続税法は,相続財産が一定金額を超えなければ相続税が発生しない仕組みをとっています。

相続税法15条は3000万円+600万円×法定相続人数の金額を基礎控除額と定めており,それ以下の相続財産であれば,相続税は発生しません。

 

現在,相続税を払わなければならないケースは1割弱程度と言われています。

また,土地・建物を相続する場合は,相続税の軽減措置があります。

これから,少しずつその説明もしていこうと考えています。

 

 

 

所得税法と交際費

今回は,所得税法との関係で交際費の範囲を考えてみたいと思います。

 

交際費の定義について,所得税法上,交際費に関する定義規定は設けられていません。

所得税法上の交際費についても,法人税法と同じ定義でよいといわれています。

 

そして,交際費の必要経費該当性の判断は,所得税法37条第1項の規定の解釈に基づいて行うことになります。

 

所得税法第37条

その年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は雑所得の金額(事業所得の金額及び雑所得の金額のうち山林の伐採又は譲渡に係るもの並びに雑所得の金額のうち第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等に係るものを除く。)の計算上必要経費に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、これらの所得の総収入金額に係る売上原価その他当該総収入金額を得るため直接に要した費用の額及びその年における販売費、一般管理費その他これらの所得を生ずべき業務について生じた費用(償却費以外の費用でその年において債務の確定しないものを除く。)の額とする。

 

この条文を素直に読めば,必要経費とは

当該総収入金額を得るための直接の費用

販売管理費等の業務について生じた費用

となりそうです。

①については,「直接」という文言があるのに対し,②について「直接」という文言がないため,直接間接を問わず業務について生じたものであれば必要経費になるようにも読めます。

しかし,実務では(税務署の見解では),事業との直接性が求められていました。

ところが,これまでの運用に反して,平成24年9月19日東京高裁(平成26年1月17日の最高裁第二小法廷で確定)は,弁護士が交際費等の範囲を争った事例で,「ある支出が業務遂行上必要なものであれば,その業務と関連するものであるというべきである。それにもかかわらず,これに加えて,事業の業務と直接関係を持つことを求めると解釈する根拠は見当たら」ないとして事業との直接性は不要との判断をしました。

ただ,気をつけなければならないのは,間接的な費用が全て認められたわけではなく,各支出を個別具体的に見て,業務遂行上必要であり,業務と関連する費用である必要があるということです。

 

その判断の一部を取り上げると,弁護士会等の公式行事後の懇親会や他の団体との協議会後の懇親会(一次会)については交際費として認め,その二次会については交際費として認めなかったようです。

このように,懇親会といってもその性質はそれぞれ異なりますので,業務に関連するかは慎重な判断が必要です。

法人税法と交際費

懇親会等の経費該当性について法人税法との関係で考えてみたいと思います。

簡単にいうと交際費に含まれる範囲はどこまでかということです。

 

交際費の定義

交際費等とは「交際費,接待費,機密費その他の費用で,法人がその得意先,仕入れ先その他事業に関係のある者等に対する接待,供応,慰安,贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」(租税特別措置法61の4④)を意味します。

 

交際費の範囲

税務上の交際費には「等」という文言が付いているように,一般的に,接待等の目的のために支出する費用ならば広く認められており,その範囲はかなり広いといわれています。

 

交際費の範囲に関する裁判(東京高裁H15.9.9 萬有製薬事件)は,法人の支出を「交際費等」とするには,①「支出の相手方」が「事業に関係のある者等」であること,②「支出の目的」が事業関係者等との親睦の度を密にして「取引関係の円滑な進行を図るため」であること,③「行為の形態」が「接待,供応,慰安,贈答」その他これらに類する行為であること,のすべてを満たすことが必要である,と判示しています。

そして,この要件に該当するか,個別具体的に考えていくことになります。

 

次回は,所得税との関係で交際費の範囲を考えてみたいと思います。

個人情報の取り扱い

最近は,個人情報の取り扱いについて慎重さが求められています。

一方,会社の吸収合併,事業の譲渡等の際には,個人情報の移動もあり得ます。個人情報はどのように守られているのでしょうか。

 

個人情報保護法23条では,個人情報取扱事業者は、原則として、「あらかじめ本人の同意を得ないで」、「個人データを第三者に提供してはならない」として,個人データの第三者提供に制限がかけられています。

もっとも,合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合(個人情報保護法23条4項2号)には,「当該個人データの提供を受ける者は、前三項の規定の適用については、第三者に該当しないものとする。」として,個人データの提供も許されています。

ただし,「個人情報取扱事業者は、合併その他の事由により他の個人情報取扱事業者から事業を承継することに伴って個人情報を取得した場合は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前における当該個人情報の利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該個人情報を取り扱ってはならない。」(個人情報保護法16条2項)というように,利用目的の制限があることに注意しなければなりません。

従業員に対する無利息貸付と課税関係

会社が従業員に対する無利息貸付した場合,従業員に課税はされるのでしょうか。

 

現在の法令では,原則として,1.8%の利率と貸し付けている利率との差額が、給与として課税されることになります。

通常,無利息で金銭を貸してくれる人はおらず,従業員が無利息で金銭を借りられたのは,会社と従業員という特別な関係があるからです。そのため,本来払うべき利息は,会社から従業員に与えられた利益であり,給与とみなそうというのがその趣旨なのでしょう。

もっとも,例外的に,①災害病気で従業員に多額の生活資金が必要となったとき,②会社が銀行等から借り入れた際の金利と同じ場合,③1.8%の利率と貸し付けている利率との差額分の利息の金額が1年間で5000円以下となる場合には,課税の対象となりません。

①従業員が無利息でお金を借りる合理的な理由がある場合,②会社が従業員に特別な利益を与えたとはいえない場合,③1.8%の利息と従業員が払っている利息の差額が小さい場合(例えば,100万円の貸付の場合,100万円の1.8%は1万8千円です。1万8千円から5千円を引いた,1万3千円以上の利息を取っていれば,課税の対象とはなりません)には,従業員に利息分の課税がなされないということです。

 

このように,何らかの利益を得た場合だけでなく,何らかの対価を払わずに済んだことについても課税関係が生じうることに気をつけましょう。

なお,現在は基準となる利率が1.8%ですが,貸付の時期によって基準となる利率が異なってきます。

 

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借り上げ社宅と税金

借り上げ社宅について

会社が,従業員に対して,福利厚生の一環として,住居について何らかの補助をする場合,大きく分けて住宅手当を出す場合と社宅として借り上げ割安もしくは無料で住まわせる場合があります。

税制上,住宅手当,つまり従業員が受け取る給与の一部とみなされ,課税対象となります。

他方,借り上げ社宅を,従業員に無償で貸与する場合,全てが課税対象になるわけではありません。

 

従業員に無償で借り上げ社宅を貸与する場合

(その年度の建物の固定資産税の課税標準額)×0.2%+12円×(その建物の総床面積(平方メートル)/3.3(平方メートル))+ (その年度の敷地の固定資産税の課税標準額)×0.22%

=賃料相当額となり,この賃料相当額が給与として課税対象になります。

原則として,「賃料相当額-徴収額」 が課税対象となります

ただし,従業員から徴収する家賃が、賃貸料相当額の50%以上であれば、会社が受け取る家賃と賃貸料相当額との差額は、給与として課税されません。

 

賃料相当額を計算するためには,固定資産税の課税標準額を知る必要がありますが,証明書等を始めて見る方にとっては,どの数字がどのように使われるのか,わかりにくい場合もあります。

そのような場合は,一度,専門家に相談されることをお勧めします。

名古屋の弁護士 内堀昌樹です

名古屋の弁護士,内堀昌樹です。

 

この度,情報を積極的に発信できればと思い,ブログを始めることにしました。

 

誠実に依頼者と向き合い,常に成長し続けるため,日々精進していきます。

税務と交通事故を中心に業務をしています。よろしくお願いいたします。