死亡保険金も相続税が課される財産です。
民法上は、受取人の財産であり、相続財産とはならないのですが、相続税法上は、みなし相続財産として、相続税が課されます。
ただし、死亡保険金は、「500万円×法定相続人の人数」の金額だけ、非課税財産となります。
さて、死亡保険金と一口にいっても、円建ての保険やドル建ての保険等、様々な種類があります。
円建ての保険の場合、支払われた金額を死亡保険金の金額として、相続税申告書に記載すればいいので簡単です。
しかし、ドル建ての保険の場合、ドルで死亡保険金が支払われるものの、相続税申告書にドルのまま記載することはできず、円に換算する必要があります。
相続開始後しばらくたってから、ドル建ての死亡保険金の請求をすると、請求時の為替相場で死亡保険金が支払われるので、その金額を記載することがあります。
しかし、それは間違いです。
ドル建ての死亡保険金は、相続開始日における為替相場で換算するのが正しい方法です。
なお、相続開始日が休日で相場がない場合には、相続開始日前日以前で最も近い日の最終為替相場で計算すれば大丈夫です。
最近は急激に為替相場が変動していますので、邦貨換算の時期を間違えば、かなりの金額の誤差が出ますので、注意が必要です。
ドル建ての死亡保険金を受け取り相続税申告が必要な方は、お気軽にご相談ください。
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成年後見人と相続税の申告期限
相続税申告の依頼を受けるとき、最初に皆様が心配されるのは、期限のことです。
相続税の申告期限は、相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月後です。
その10か月後の日が土日祝日であれば、その次の平日が申告期限となります。
上記が通常の申告期限ですが、常に、申告がスムーズにできるわけではありません。
例えば、相続人が認知症で弁識能力がない場合、相続税の申告をすることができません。
そのため、法定代理人、つまり成年後見人を選任しようとしても、かなりの時間がかかります。
そのため、成年後見人が選任された時点で、10か月の申告期限が迫っており、間に合わないのでは、と考える方もいます。
この点については、相続税基本通達27-4の規定が参考になります。
この規定では、「 相続開始の事実を知ることのできる弁識能力がない幼児等 法定代理人がその相続の開始のあったことを知った日(相続開始の時に法定代理人がないときは、後見人の選任された日)」と記載されています。
このため、成年後見人が選任されたのが遅くなっても、焦らずに相続税の申告書を作成し、選任の日の翌日から10か月以内に申告をすれば大丈夫です。
名古屋の方で、相続税の申告期限が心配されている方は、まずは、お気軽に電話でご相談ください。
家なき子特例と保有要件2
家なき子特例の保有要件(当該宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること)について前回の質問の他に次のような質問が来たことがあります。
申告期限までに特例の対象となりうる宅地の引き渡し及び所有権の移転はしない、しかし、売買契約は締結し、建物は取り壊して宅地の引き渡しの準備をしている場合にも保有要件をみたすのか、という質問です。
ちなみに、所得税法では、譲渡所得発生の時期は原則として引渡日ですが、契約日を譲渡所得発生の時期として確定申告をすることができます。
しかし、これはあくまでも、収入の帰属認識に関する考えから引渡日と契約日の選択ができるのであって、小規模宅地等の特例という措置法に規定された相続税に関する優遇措置という異なる場面で、譲渡所得の考え方が及ばないと考えるのが通常です。
なお、準用するとの規定もありません。
そのため、通達等があるわけではありませんが、民法上引渡日までは所有権を相続人が有しているのであり、相続税の申告期限前に土地の売買契約をしていたとしても、所有権が移転しない以上、相続税申告期限時点では、当該宅地を有しているといえ、保有要件を満たすと考えられます。
小規模宅地等の特例の適用は、様々な要件があり、実は難しい特例といえます。
名古屋の方で相続税にご不安を抱えている方はいつでもお気軽にご相談ください。
家なき子特例と保有要件
相続税の計算において、小規模宅地等の特例により、土地の評価額を最大80%減額することができます。
特に、被相続人の居住の用に供されていた宅地を被相続人の配偶者以外かつ同居していない親族に適用可能性のある特例を家なき子特例といいます。
持ち家を持っていない相続人が相続することで、特例の適用があるので、このような呼ばれ方がされます。
そして、家なき子特例のうち、保有要件という要件があります。
具体的には、「当該宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること」という要件があります。
具体的に、どのような質問があるかまた、その回答を説明していきたいと思います。
申告期限までに特例の対象となりうる宅地上の建物を取り壊した場合にも小規模宅地等の特例の適用を受けることができるのかという質問です。
ちなみに、同居親族が特例の適用を受けるためには、「相続開始の直前から相続税の申告期限まで引き続きその建物に居住し、かつ、その宅地等を相続開始時から相続税の申告期限まで有していること。」という要件があるので、上記のように建物を取り壊せは特例の適用はできません。
それに対して、
同居していない持ち家を所有していない相続人が適用可能性のある、家なき子の特例は、土地を保有していることが要件となっています。
つまり、建物の保有要件もなく、建物に居住するという要件もないので、申告期限までに建物を取り壊したとしても家なき子の保有要件を満たします。
名古屋で、小規模宅地等の特例の適用についてご不安な方は、いつでもお気軽にご相談ください。
譲渡所得と取得時期
不動産を売却する際にも税金が関わってきます。
この税金のことを譲渡所得税といいます。
不動産は、取得してからの期間が短ければ、税率が高くなってしまいます。
具体的には、
譲渡所得金額は譲渡価額-(取得費+譲渡費用)で計算します
長期譲渡所得の場合は、譲渡所得金額×15%(住民税5%)
短期譲渡所得の場合は、譲渡所得金額×30%(住民税9%)
が税額となります。
長期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年を超えるものをいいます。
短期譲渡所得とは譲渡した年の1月1日において所有期間が5年以下のものをいいます。
判断に迷う人がいるのは、
例えば、相続や贈与によって売却の1年前に取得した資産の取得の時期はいつになるのかという点です。
この点については、
相続や贈与によって取得したときは、被相続人や贈与者の取得の時期がそのまま取得した相続人や受贈者に引き継がれます。
したがって、被相続人や贈与者が取得した時から、相続や贈与で取得した相続人や受贈者が譲渡した年の1月1日までの所有期間で長期譲渡所得か短期譲渡所得かを判定することになります。
名古屋で不動産を売却した方、譲渡所得について、ご不安なことがある方は、税理士に相談することをおすすめします。
相続時精算課税と贈与した年の贈与者死亡
生前対策の一つとして、相続時精算課税制度の適用について、相談を受けることが最近多くなってきています。
相続時精算課税制度の適用を受ける場合、2500万円まで贈与税がかかりません。
その意味で、財産の先渡しとして、有用な制度となります。
その代わりに、相続の際に、相続財産に相続時精算課税制度適用贈与に相当する金額を加算して、相続税を算出します。
もし、相続財産に相続時精算課税制度適用贈与に相当する金額を加算しても、相続税の基礎控除額を下回る場合には、申告も納税も不要です。
ただし、贈与者は贈与をした年に死亡した場合で、相続人が相続時精算課税制度の適用を受けようとする場合は、贈与税の申告期限の提出期限又は相続開始の日の翌日から10ヶ月を経過する日のいずれか早い日までに、相続時精算課税選択届出書を提出する必要があります。
期限までに相続時精算課税選択届出を提出できなかった場合には、その適用を受けることができませんので注意が必要です。
暦年贈与として、基礎控除額110万円を控除した残額に税率をかけて、贈与税を納める必要があります。
名古屋の方で、相続時精算課税制度の適用を考えている方は、お気軽にご相談ください。
贈与税がかからない財産について
相続税を計算する際には、相続開始3年前までの相続人及び受遺者に対する贈与財産の額を加算して、相続税額を算出します。
この贈与財産の加算は、年間110万円の基礎控除額の範囲内の贈与だったとしても行われます。
ただし、そもそも贈与税の非課税財産に当たる場合には、この加算はなされません。
具体的には、
扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの(相続税法第二十一条第の三第1項第2号)、について、よく相談をうけます。
この規定のとおり、学校の授業料を支払う場合には、相続財産と切り離して考え、加算する必要すらありません。
ただし、教育費をまとめて先渡ししている場合は、この規定に当てはまらず、通常どおり贈与財産額を相続財産に加算する必要があります。
なお、さらに例外として、一定の要件を満たし教育資金贈与の特例の適用が可能であれば、教育費の先渡しであっても、相続財産に加算する必要はありません。
このように、相続税、贈与税に関する規定は、例外だけでなく、例外の例外が設けられることも多いので、相続や贈与により、税金が発生しそうだと考える名古屋の方は、お気軽にご相談ください。
負担付死因贈与と遺贈
事件の関係で負担付死因贈与契約について調べる機会があったので、気になったことを書いていこうと思います。
書籍と同時並行で、ネットではどのようなことが書かれているのかも調べていたのですが、遺贈との対比に関する記述で、
遺贈は、相続人全員が遺言と異なる内容で分割協議をしてしまうと、受遺者は無理矢理に遺言内容を実行することはできない、だから負担付死因贈与契約のほうが実行性の点において、優れているんだという記述がかなりの数見つかりました。
しかし、受遺者の利益というのは、当然守られるべきもので、受遺者の意思に反して、相続人全員が遺言と異なる受遺者の利益を侵害する内容で分割協議をしても、その協議よりも遺言が優先されます。
遺言と異なる内容で分割協議をするためには、受遺者を含め相続人全員の同意が必要となるというのが正しいです。
遺贈は、相続人全員が遺言と異なる内容で分割協議をしてしまうと、無理矢理に遺言内容は実行することはできないという点について、根拠を調べましたが、根拠らしい根拠は見つかりませんでした。
ただ、負担付死因贈与契約に関して調べた場合に上位に表示されるページにはどれも似通った表現で同様のことが書かれていました。
おそらく、負担付死因贈与契約についてSEO上成功した記事をよく調べることもなく、他の人が真似をしていくつも似たような記事ができたのではないかなと推測しています。
私も全ての専門書、裁判例を調査したわけではないので、間違いがないとは言い切れないのですが、
一般論として、自分で専門書、裁判例を調べる能力がないと感じるのであれば、ネット記事は鵜呑みにせず、法的なトラブルが起こりそうな場合には、弁護士に相談することをおすすめします。
特に、相続は、金額が大きくなりがちなので、注意が必要です。
配偶者の税額軽減と障害者控除
相続税は、相続財産が基礎控除額を超える場合に、相続財産を受け取る方に納付の義務があります。
また、各種、特例や控除があり、相続税が減額される場合がありますが、その適用の関係について、判断に迷うこともあります。
よく聞かれるのが、配偶者の税額軽減の特例と障害者控除の関係です。
配偶者の税額の軽減の特例とは、被相続人の配偶者が取得した相続財産が、 1億6千万円又は配偶者の法定相続分相当額、どちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。
他方、障害者控除とは、相続人が障害者である場合で、その障害者が満85歳になるまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は1年につき20万円)の金額を控除できるという制度です。
また、障害者控除額が、その障害者本人の相続税額では、引き切れない部分の金額については、その障害者の扶養義務者(配偶者、直系血族及び兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者)の相続税額から差し引くことができます。
それでは、配偶者が障害者である場合、障害者控除額はどうなるでしょう。
相続人である配偶者が障害者でもある場合、配偶者の税額軽減の特例により、その配偶者は障害者控除を使わなくとも、相続税額は0になることが多いです。。
この場合、配偶者が本来控除を受けるはずであった障害者控除額については、配偶者の扶養義務者(例えば、子供)の相続税額から差し引くことができます。
ただし、障害者控除の適用があるのは、財産を取得した相続人です。
そのため、配偶者が全く相続財産を受け取らず、配偶者の税額軽減の特例の適用がなくとも、相続税額がゼロの場合は、障害者控除の適用を受けることもできないため、差し引けなかった障害者控除額を扶養義務者の相続税額から差し引くこともできないので注意が必要です。
相続税は、落とし穴が多い分野ですので、相続税について心配を抱えている方は、名古屋駅近くの当法人にお気軽にお越しください。
令和4年度税制改正大綱 贈与税・相続税の一体課税について、言及なし
令和4年度の税制改正大綱について、令和3年12月10日に正式発表がありました。
正式発表前のニュースで相続税・贈与税の一体課税の話題がありませんでした。
そして、発表されたものを確認しても、相続税・贈与税の一体課税については、何も触れられておりませんでした。
そのため、今年だけでなく、令和4年度についても、暦年贈与は有効な節税方法といえます。
なお、昨年の令和3年度税制改正大綱では、格差固定防止のため、現行の相続時精算課税制度と暦年課税制度のあり方を見直す、と記載されていたことから、大きな話題となっていたところ、 相続税・贈与税の一体課税の方針が転換したわけではありません。数年後に税制が変わる可能性もありますので、注意が必要です。
住宅資金贈与について
最近、住宅資金贈与について、質問を多くうけるので、よく質問を受ける点をまとめていこうと思います。
また、住宅資金の贈与は、贈与税だけ考えればいいと思っている方も多いですが、消費税の知識考え方も必要となってくる場面もあります。
まず、住宅資金贈与の特例の非課税限度額は
住宅用の家屋の新築等に係る対価等の額に含まれる消費税等の税率が10%である場合
住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
平成31年4月1日~令和2年3月31日 | 3,000万円 | 2,500万円 |
令和2年4月1日~令和3年12月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
上記以外の場合
住宅用家屋の新築等に係る契約の締結日 | 省エネ等住宅 | 左記以外の住宅 |
~平成27年12月31日 | 1,500万円 | 1,000万円 |
平成28年1月1日~令和2年3月31日 | 1,200万円 | 700万円 |
令和2年4月1日~令和3年12月31日 | 1,000万円 | 500万円 |
という表が国税庁HPに記載されています。
令和3年12月1日に省エネ住宅でない新築にかかる契約締結があった場合の非課税限度額は、1000万円です。
他方、令和3年12月1日に省エネ住宅でない中古マンションにかかる契約締結があった場合の非課税限度額は、500万円の可能性もあれば、1000万円の可能性もあります。
新築戸建・新築マンションの場合、売主が個人ということはなく、必ず不動産業者になるため消費税(消費税率10%)がかかるのです。
そのため、令和3年12月1日に省エネ住宅でない新築にかかる契約締結があった場合の非課税限度額は、1000万円です。
省エネ住宅でない中古マンションの場合は、
売主が個人の場合は、非課税なので、500万円が非課税限度額です。
売主が不動産会社の場合は、上記のように消費税10%ですので、1000万円が非課税限度額です。
代襲相続と数次相続と相次相続
相続の場合、まず、相続人の確定をする必要がありますが、相続人となるべき方が亡くなっていると、相続人が誰なのかということを間違うこともあります。
簡単そうに見えますが、落とし穴があるところなので、注意が必要です。
相続人が亡くなっている場合、「代襲相続」、「数次相続」、「相次相続」のどれかに当てはまります。
被相続人が死亡した時点より前に、その被相続人の相続人となるべき方が亡くなっている場合は、「代襲相続」に当たります。
被相続人が死亡した時点より後に、その被相続人の相続人となるべき方が亡くなっている場合は、「数次相続」、「相次相続」に当たります。
その被相続人の遺産分割前は「数次相続」、遺産分割後は「相次相続」と呼ばれます。
「代襲相続」の場合には、亡くなっている相続人の直系卑属が代襲相続人になるので、亡くなっている相続人の配偶者は相続人にはなりません。
「数次相続」、「相次相続」の場合には、亡くなった相続人の配偶者も相続人になります。
このように、相続人の死亡時期によって、相続人が変化しますので、心配な場合は、専門家に相談することをおすすめします。
最速で相続税申告書を作成する方法(路線価の発表時期)
相続税の計算の際には、土地の相続税評価額を算出する必要があります。
路線価は、その年1月1日時点の評価です。
令和3年1月1日に亡くなれば、国税庁が発表する令和3年分の路線価をもとに相続税評価額を計算します。
ただし、例えば1月亡くなられた方は、7月まで、正確な相続税評価額を算出することができません。
なぜなら、国税庁がその年の路線価を発表するのが7月になるからです。
ですので、1月1日に亡くなった方の相続税申告を早くしたいとはいっても、7月に入るまで申告することはできません。
7月になるまで相続税の申告資料が集まらないのであれば、7月から申告に向けて動こうという方もいらっしゃいますが、それもお勧めできません。
なぜなら、1月1日が相続開始日であれば、その年の11月1日が申告期限となり、7月に入って動き出したのでは遅い場合もあるからです。
そのため、最速で申告書を作成するには、前年の路線価で土地の評価額を計算し、7月に入ってから、その年の路線価で再計算をして、申告書を仕上げます。
7月まで資料が集まらないから、それまで申告書は作成しませんという税理士もいると聞いたことがありますので、税理士に依頼する場合には、どういった流れでいつまでに申告書を作成するのかというのを契約前に確認することをお勧めします。
名古屋に土地をお持ちで相続税が心配という方はお気軽にご相談ください。
相続税の申告後に贈与が発覚した場合と追加で納付が必要な相続税
8月に入り、まだまだ名古屋は暑さが続きます。
本日は、ちょっと理不尽にも思える相続税のお話をしたいと思います。
相続税申告をしたのちに、忘れていた相続時精算課税制度による贈与が発覚することがあります。
相続財産が1億円、相続人が被相続人の子供2人(子A、子B)のみで、子Aが相続時精算課税制度による贈与1000万円を受けていた場合を考えます。
子Aが贈与を受けていることが発覚した場合に、子Aが相続税を追加で支払う必要があるのは当然ですが、子Bも相続税を支払う必要があるのはご存じでしょうか。
これは、相続税の計算方法がわかっていないとなかなか理解ができず、揉め事のもとになることもあります。
相続税は、まず、総財産から基礎控除額を差し引いた課税財産を法定相続分で分割したと仮定して、全体の相続税を計算し、その後、取得財産の割合に応じて、負担する相続財産を決定します。
分割割合によって、全体の相続税の額が変化するのは法的安定性を欠くことを理由の一つとして、このような計算方法が採用されているといわれています。
相続財産が1億円の場合の計算過程(子A5000万円、子B5000万円相続する旨の分割協議成立)
1億円-(3000万円+600万円×2)=5800万円
5800万円×1/2=2900万円
2900万円×15%-50万円=385万円(法定相続分で分割した場合の相続人一人当たりの相続税)
385万円×2=770万円(全体の相続税)
770万円×5000万円/1億円=385万円(子Aが取得した財産に応じた相続税)
770万円×5000万円/1億円=385万円(子Bが取得した財産に応じた相続税)
相続財産が1億1000万円の場合の計算過程(子A5000万円、子B5000万円相続する旨の分割協議成立、子Aに相続時精算課税制度適用の贈与1000万円)
1億1000万円-(3000万円+600万円×2)=6800万円
6800万円×1/2=3400万円
3400万円×15%-50万円=460万円(法定相続分で分割した場合の相続人一人当たりの相続税)
460万円×2=920万円(全体の相続税)
920万円×6000万円/1億1000万円≒502万円(子Aが取得した財産に応じた相続税)
920万円×5000万円/1億1000万円≒418万円(子Bが取得した財産に応じた相続税)
このように、相続税が1億円であると申告していたにも関わらず、あとから相続時精算課税制度による1000万円の贈与を子Aが受けていたことが発覚した場合、子Aが追加で約117万円の相続税を納付しなければならないだけでなく、取り分が増えたわけでもない子Bも約33万円の相続税を納付しなければならないことになります。
各相続人が受け取った財産に相続税率を掛けて相続税を算出するのではなく、まず、全体財産にかかる相続税を計算して各相続人が取得した相続財産額に応じて相続税を支払うので、このような結果となります。
相続税の仕組みの計算を知らないと納得ができないかもしれません(仕組みが理解できても納得はできないかもしれません。)。
そうならないように、相続税は、慎重に正確に財産の漏れがないように申告を行う必要があります。
相続開始日が休日の場合の有価証券の評価
7月に入り、名古屋もかなり暑い日が続いています。
上場株式も投資信託も相続開始日の終値が相続税評価を行う際に重要な数字となってきます。
しかし、土日祝日は証券市場が開いていないため、そもそも、終値というものが存在しません。
こういった場合、思いつくのは、前後の数字を評価のために採用することです。
有価証券であっても種類によって、どの数字を採用するかは微妙に異なるので、注意が必要です。
上場株式の場合の相続税評価
上場株式の場合、①相続開始日の終値、②相続が発生した月の終値平均額、③相続発生した月の前月の終値平均額、④相続が発生した月の前々月の終値平均額、の中で最も安い値で評価をします。
相続開始日が休日の場合は、前後を問わず最も近い日の終値を採用します。
三連休の中日で、最も近い日の終値が二つある場合は、その二つの終値の平均を採用します。
なお、
一般的な投資信託の評価方法
基準価格×口数÷1万-源泉徴収額-信託財産留保額、という計算で算出されます。
信託財産留保額とは、解約の際の手数料で、目論見書を確認すれば、その留保割合が記載されています。信託財産留保額のない投資信託も多いです。
相続開始日は休日で、基準価格がない場合は、相続開始日前で一番近い日の基準価格を使って評価をします。
(「課税時期の基準価額がない場合には、課税時期前の基準価額のうち、課税時期に最も近い日の基準価額を課税時期の基準価額として計算する。」財産評価基本通達 199 証券投資信託受益証券の評価 抜粋)
このように、上場株式と投資信託では、相続開始日は休日の場合には、基準とする日が異なることがありますので、注意が必要です。
登記識別情報と登記完了証の違い
名古屋の弁護士の内堀です。
今回は、不動産の登記に関して、勘違いしている方がいたので、どういった勘違いをしていたかを話していきたいと思います。
それは、登記識別情報と登記完了証の違いです。
不動産の売買を原因とする登記を申請する場合には、登記識別情報(又は登記済証)
が必要となります。
この登記識別情報の代わりに、登記完了証を提出しようとするかたもいらっしゃいますが、登記識別情報と登記完了証は全く別物です。
登記完了証とは、登記が完了した際に、法務局から交付されるもので、紛失しても再交付はされません。
登記完了証には、不動産の住所、不動産番号、申請受付番号、受付年月日、登記の目的、登記名義人等が記載されていますので、重要な書類のように見えます。
ですので、登記識別情報と間違える方もいらっしゃるのかもしれません。
しかし、登記完了証は、当該不動産の所有権を証明するものではなく、単にその登記手続きが完了したことを証明する書類に過ぎないということです。
他方、登記識別情報は、平成17年の不動産登記法改正により、登記済証(いわゆる権利証)に代わるものとして導入されたものです。
登記完了証と一緒のタイミングで法務局が発行する書類で、登記識別情報通知という書類の下部の切取線に沿って目隠し部分を外すと英数字の組み合わせが記載されています。
その英数字の組み合わせが、登記識別情報です。
登記識別情報は、売買や贈与を行うときに、登記名義人の本人確認の役割をしますので、他人には知られてはならないものですので、必要な時が来るまで目隠し部分を切り離さないようにしましょう。
相続時精算課税制度の注意点
60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子供に贈与する場合、相続時精算課税制度を選択することで、それ以降の贈与について2500万円まで贈与税がかかりません。
不動産を購入する際に、不動産会社からこの制度があることを聞いて、2500万円の贈与を親から受けるということをよく聞きますが、注意しなければならないことが多い制度ではあります。
まず、贈与税と相続税は密接に関係している税金です。
生前に親から子に資産を移動する場合は、贈与税がかかる可能性があり、親が亡くなった際に子に資産を移動する場合は、相続税がかかる可能性があります。
どちらも、親から子に資産が移動する際にかかってくる税金という意味では、似ている税金といえます。
実際、贈与税法という法律はなく、相続税法の中に贈与に関する規定が含まれています。
相続税との関係で、相続時精算課税制度を利用した贈与の意味がないといわれるのは、相続時精算課税制度を利用した贈与によって移動した資産は、相続税の計算の際には全て加算されるからです。
このように贈与は、相続税対策の一環として行われることが多いにも関わらず、相続時精算課税制度を利用した贈与は相続税対策として全く意味がないものとなります。
また、相続時精算課税制度を一度選択すると、一生涯その効力が続き途中で選択をやめるということはできません。
さらに、相続時精算課税制度を選択した後の贈与について、期限内に申告しなければ、2500万円まで贈与税がかからないという特別控除すら使えず、110万円の基礎控除額も使えず、一律に贈与額の20%の贈与税がかかります。
一度、相続時精算課税制度を選択すれば、無条件で(申告しなくとも)2500万円まで贈与税がかからないと勘違いされているかたもいるので、注意が必要です。
こういったことは、相続時精算課税制度があることを教えてくれた不動産会社がフォローすることはほとんどありません。
なお、相続時精算課税制度は、デメリットばかりではなく、親と子の財産状況によっては、非常に有用な制度となることもあります。
資産を動かす際には、税理士や弁護士といった専門家に相談し、自分や親の財産状況にあった方法なのかを確認し、多少費用がかかったとしても専門家に依頼することをおすすめします。
最適な暦年贈与の額とは
名古屋にお住まいの方から、毎年いくら暦年贈与をしていくのがいいのかという質問を受けました。
毎年110万円の贈与であれば、贈与税がかからないので、110万円が相続税を減らすためにベストな贈与額であると信じている方もいらっしゃいますが、全員がそうとは言い切れません。
例えば、生前対策を考えている人に配偶者はおらず、法定相続人である子供が二人いると想定します。また、孫も2人いるとします。
次に、現在の財産を1億円とし、今から孫二人に贈与をすることで、5年後の財産及びその財産を課税財産とした時に相続税と贈与税の計算がどう変化するかを検討していきます。
パターン1 孫二人に100万円ずつ毎年合計200万円を贈与する場合
年110万以内の贈与には贈与税がかからないので、5年間の贈与税の合計は0円です。
また、5年間で1000万円財産が減少しますから、5年後の財産は、9000万円で、相続税は620万円となります。
よって、相続税と贈与税の合計は、620万円となります。
パターン2 孫二人に500万円ずつ毎年合計1000万円を贈与する場合
年500万円にかかる贈与税は、48.5万円です。
そのため、贈与税の5年間の合計額は、48.5万円×2×5=485万円
また、5年間で5000万円財産が減少しますから、5年後の財産は、5000万円で、相続税は80万円となります。
よって、相続税と贈与税の合計は、565万円となります。
パターン3 孫二人に300万円ずつ毎年合計600万円を贈与する場合
年300万円にかかる贈与税は、19万円です。
そのため、贈与税の5年間の合計額は、19万円×2×5=190万円
また、5年間で3000万円財産が減少しますから、5年後の財産は、7000万円で、相続税は320万円となります。
よって、相続税と贈与税の合計は、510万円となります。
相続税と贈与税は税率が異なるため、このように、毎年いくら贈与するかによって、相続税と贈与税の合計額が変わってきます。
上記の例であれば、贈与税はかかってしまうものの毎年300万円程度贈与すれば、効果的な暦年贈与といえます。
相続人の人数、相続財産、生前対策を考えている人の年齢によって、いくら贈与すべきかは変わってきますので、一度専門家に相談することをおすすめします。
未分割申告の場合の注意点
1 相続税の申告期限
相続税の申告は,被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10か月以内に行う必要があります。
例えば,令和2年10月7日に亡くなった場合,10か月後の令和3年8月7日が申告期限となります。
なお,申告期限が,土日祝日の場合は,これらの日の翌日が申告期限となります。
被相続人が,名古屋市中村区にお住まいの方は,名古屋中村税務署に申告をする必要があります。
また,相続税の納付も申告期限までに行う必要がありますので,納税準備も必要となります。
2 遺産分割が10か月以内にまとまらない場合のどんなデメリットがあるか
一番大きなデメリットを一言でいうと,納税資金の用意が通常の場合よりも大変になることが多いということです。
遺産分割が10か月以内にまとまらないときでも,相続税の申告期限が延長されることはありません。
遺産分割協議がまとまらない場合は,法定相続分で申告を行い,分割がまとまった後に,再度その分割に従って,申告を行う必要があります。
税額の軽減の特例は,基本的に,実際に財産を取得したことが決まり,その相続人が支払う相続税について,相続人がどういった関係にある者であるか,そういった財産を受け取ったかという点に着目して,適用の可否が決まります。
例えば,配偶者の税額軽減の特例については,本来,配偶者が受け取る財産に相続税がかかってくるはずのところ,配偶者は被相続人の財産で生活していた場合が多く,配偶者の今後の生活が相続財産で保障されるべきであるという考え方のもと,大きな税額軽減があります。
しかし,配偶者が受け取る財産が確定していない状況では,配偶者が具体的にどれだけの相続税が発生するかが確定していないため,配偶者の税額軽減の特例の適用を受けることができないのです。
また,小規模宅地等の特例の適用を受ける事のできる可能性のある土地について,取得する相続人の性質(被相続人と同居していたか等)によって,適用の可否が決まります。
そのため,土地について,誰が取得するか確定しない状態では,そもそも小規模宅地等の特例の適用を受けることができないのです。
3 注意点
未分割で特例の適用を受けずに申告した場合,後に特例の適用を考えている相続人は,「申告期限後3年以内の分割見込書」を申告書と一緒に提出する必要があります。
この書類を提出しなければ,遺産分割協議が終了したあと,税額軽減の特例の適用を受けたことを前提に相続税の申告書を作成し直し,税務署に納めすぎた相続税の還付を求めることができなくなりますので,注意が必要です。
さらに,申告期限後3年以内に遺産分割がまとまらなかった場合には,「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出する必要があります。
基礎控除額と法定相続人
名古屋の暑さがどんどん増していきます。秋が待ち遠しいです。
本日は,基礎控除額について,間違いやすい点について,まとめていこうと思います。
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相続税の基礎控除額は,3000万円+600万円×法定相続人の数,で計算することができます。
しかし,相続税法上の法定相続人の数と民法上の相続人の数は異なるため,しばしば間違う人がいます。
基礎控除額以下であれば,そもそも相続税の申告の義務はありません。
そのため,相続税の計算において,最も基本的な基準であり,注意深く考える必要があります。
2 本来,相続人であるはずの者が既に亡くなっている場合
例えば,被相続人に子供が1人いたにも関わらず,被相続人の相続開始時点において,その子供が亡くなっており,被相続人からみて孫が3人いたとします。
この場合,法定相続人の数は,3人ということになりますので,基礎控除額は,3000万円+600万円×3=4800万円ということになります。
3 養子が何人もいる場合
養子も一親等の血族であり,民法上の相続人にあたります。例え,養子が何人いても,全員が民法上の相続人です。
しかし,民法上の相続人の数をそのまま基礎控除額の計算の基礎とすると,容易に相続税の課税の潜脱ができてしまいます。
そのため,相続税法では,基礎控除額の計算とできる養子の数の制限を設けています。
具体的には,実子がいる場合には養子の数は1人まで,実子がいない場合には養子の数は2人まで,基礎控除額の計算の基礎とすることができます。
4 相続放棄した相続人がいる場合の基礎控除額
相続放棄した相続人がいる場合は,その相続放棄がなかったものとして,基礎控除額の計算をすることになります。
例えば,被相続人の相続人が子供が1人のみ,また被相続人の兄弟が5人いるとします。
相続放棄前であれば,相続人が被相続人の子供1人であるところ,その子供が相続放棄をすれば,相続人は被相続人の兄弟5人となります。
仮に,このような場合に,基礎控除額が,3600万円(3000万円+600万円)から6000万円(3000万円+600万円×5)に増えてしまえば,容易に相続税が変わってしまうことから,相続税の計算においては,相続放棄はなかったものとして計算するという規定が相続税法にはあるのです。
このように,民法上の相続人の人数が,相続税の基礎控除額の計算の基礎とならない場合もあることに注意が必要です。